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退行催眠(4) [小説 < ブレインハッカー >]

Insight CD (インサイト CD) 
Insight CD (インサイト CD) [Soundtrack]
~ Immrama Institute (アーティスト)
インサイトCDでは、はじめから終わりまで、自然な雨音が流れています。
雨音の下層では、特殊なバイノーラル音響技術が用いられており、
それにより、聴く人に劇的な意識の変化が起こります。

バイノーラル音響効果による脳波の変化は大変分かりやすく、
多くの方が聴き始めて数分で、脳波の状態が何か変わっているのが体感として分かるでしょう。

24分経ったあとのすっきり感は素晴らしく、
頭に雑念のない状態の、穏やかな気分に驚かされます。

私たちの頭のなかは、ふだん思考の断片や様々な感情が入り混じって、
とても混沌としているのかもしれません。

聴き始めて最初の数日は、脳がバイノーラル音響技術に慣れなくて、
すぐ眠くなってしまうと思います。

しかし毎日インサイトCDを少しずつ聴くことによって、少しずつ頭の中が整頓されていきます。
その過程をじっくりと楽しんでください。

インサイトCDに使用されている雨音はとってもリアルで、
毎日聞いても聞き飽きない味わい深さがあります。
このCDはすでにブログでも話題になっているようですね。
  
 
                          退行催眠(4)
 由美が座ったようにリラックスしてソファーに腰を下ろすと、教授の言葉を待った。教授の話し方や声質は柔らかく、急激に身体全体が弛緩してくるのを感じた。心地よさを感じながらも、体外離脱をしたときと同じように意識はどこかで冷静に観察をしていたが、しかしそれも余り長続きはせず、意識は次第に朦朧と霞んでいった。
 後ろから追っ手が迫ってくる。伊蔵は慣れた山道を仲間のところへ急いだ。このまま追っ手を振りきったとしてもいずれ隠れ家は見つけられるに違いない。一刻も早く知らせて逃げるしかない。木々の間をすり抜けるように走りながら、頭の中は初音の姿が姿が浮かんでは消えした。
<裏切るはずがない、何があった>
 初音の身が気がかりだった。追っ手の姿は完全に見えなくなったが、いずれやって来る。奴らは小勢だが選り抜きの猛者揃いだ。
<いくら童子様の術が優れていても全員を相手には勝ち目はない>
 伊蔵は死に物狂いで駆け抜け、隠れ家に近づくと大声で、
「逃げろ!追っ手が来るぞ」
 と叫んだ。
 中から数人の若者が太刀を手に飛び出し、ある者は大きなケヤキによじ登って様子を見、ある者は、木々の間に目を凝らし身構えた。伊蔵が指さす方に何人かが走り出すと、隠れ家から童子が出てきた。村の若者でないことは一目で分かるほど端整な顔立ちに、柔らかそうな長い髪を後ろで一つに束ね垂らしていた。
 童子は、ハアハア息を切らし座り込んだ伊蔵の前で膝を折ると、
「何があったのじゃ」
 と、落ち着いた口調で尋ねた。
「申し訳ございません、初音の後から追っ手が………先日都から到着した連中にございます。早くお逃げ下さい、一刻も猶予はごさいません。どうか早く!」
 伊蔵はそこまで言うと後は何も言えず、肩で息をするだけだった。
 童子は辺りを見回すと、近くにいた若者に皆を集めて逃げる用意をするように命じた。
荷物をまとめるとそれぞれ身体に縛りつけ、最後に童子が青く光る握り拳ほどの石を絹布に包むと懐に入れた。
「都に参るぞ、者共遅れるな!」
 と童子が叫び、後から村の若者が後を追った。華奢な顔からは想像出来ない程の達者な走りは村の若者達の息を切らし、追っ手との距離を徐々に開いた。伊蔵はついて行けない速さでは無かったが、徐々にスピードを落としやがて一人立ち止まった。
 初音を置いて行くことは出来ない。たとえ命を落としたとしても……………。伊蔵はゆっくりと走ってきた方向へ向きを変えると、意を決したように走り出した。振り返ったときの初音の眼差しが脳裏に浮かぶ。夢中で走り気がつくと周りを兵隊に囲まれ逃げ道は無くなっていた。
 伊蔵はここで死ぬことを覚悟したが、もう考えることは何も無い。自分の気持ちに正直に動いた結果なのだ。自分の向かった先には初音がいて、後ろには仲間がいる。ここで少しでも連中をてこずらせればそれで本望である。伊蔵は太刀を抜くと正面で構える男に向かって切りかかっていった。体が熱くなり意識が遠のいていくのが判った。目の前に男の足が見える。背中にもう一度熱湯をかけられたような熱さを感じると、体が軽くなり視野が拡がった。
 背中に太刀を突き立てられ、血まみれになって横たわる自分が見える。男は太刀を伊蔵の背中からゆっくり抜くと鞘に収め、そしてまた走り出した。不思議と何の感情も湧いてこない。その光景を淡々と眺める自分がいる。暫くすると急に体が猛烈な速さで宙を飛び始めた。眼下に黄色い点が見えたかと思うとそれは瞬く間に視野いっぱいに広がった。菜の花の群生している村はずれの山の斜面だった。子供のころ初音とよく遊んだところだ。体の中をあらゆる光が通り抜けると光は徐々に強くなり、やがて意識が薄れていくのを感じた。
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