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第2章 その(23) [小説 < ツリー >]

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                             第2章 その(23)

「俺、なんか言ってましたか?」
「ああ、少し騒いでたけどね、あの程度は可愛いいもんだよ」
 片岡さんはそう言うと声を出して笑った。

「私は驚いたわ、だって、急に汚い言葉で話し始めるし、くそ神主とかクソババァって言ったのよ。それに自分のことを<ワシ>って言うのよ。一体誰なのよ」

 美緒は目を丸くして俺を睨みつける。だけどそんなことを言った覚えはないし、訳がわからない。
「一体俺はどうなってしまったんですか?」
 祐介は訊いた。

「かるーく乗っ取られたね」
 片岡さんは、何事もなかったように言うが、<かるーく>はないだろうと思う、俺にしたら一大事だし、自分が自分でなくなるなんて考えたくもない。
「乗っ取られるって、誰にですか?」
「そこなんだが………おきぬさんはどう思う」
 片岡さんも、そこのところはわからない様子だ。

「どうも腑に落ちないがね……。とりあえず、今日のところは大丈夫だったよ。祐介さんの中にいたのは、おそらく………魔桜に関係はあると思うけど、悪さをするような力のある奴じゃなかったね。この程度の奴ならね、誰でも普通に入られてたりするんだよ。気がつかない内に入られて、多少の影響は受けてもね、そのまま気づかれないまま出て行ったりすることも多いね。ほとんどの人は一度や二度は入られてると思うよ」

 婆さんも片岡さんと一緒で、大したことではないような言い方だが、俺は今まで生きてきて一番の大事に思える。
 一度や二度って、それじゃ、大学へ行けば乗り移られた奴らと食事をして、酒を飲んで騒いでいることになるだろう、聞けば聞くほど頭が変にになりそうな気がする。

「叔父さんね、ちょっと言いにくかったから後で聞こうと思ってたんだけど、昨日ね、ここに泊まったの。それで、夜中に祐介君が散歩に出ようって誘うから、杉のところまで行ったの。そしたら私ね、急に今の祐介君みたいになって、<かわれ>って言ったんだけど……何かが入ってきたことはわかったのよ。でもその時だけで、すぐ元通りになったの……」
 美緒は不安そうに尋ねた。

「そう言うことは、先に言わないとだめだろう。そのあと気分が悪くなったとか、急に眠くなったとか、いつも考えないようなことが頭に浮かぶとか、夢とか見なかった?」
 片岡さんは美緒の顔を覗きこむようにして聞いた。
「うん、自分では何もなかったと思うけど、祐介君はどう思う?」
「そのあとも気をつけてみてたけど変わりはなかったと思うよ。」
 片岡さんは腕組みをして考えていたが、
「それなら大丈夫だろう、それにもし何かあれば、お祓いに美緒も反応したはずだからね」

 黙って聞いていた婆さんが、何かに気がついたように顔を上げた。
「杉のところって言ったね」


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