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計画(11) [小説<物体>]

               計画(11)

「神様だったら絶対人を憎んだりしないよ。だから私たちの敵はタチの悪いお節介な宇宙人だと思う」
 高校2年生の遠藤春海さんが言った。俺たちの周りにみんなが集まっている。此処にいる仲間は俺が行った妙な世界に一緒に行き、そしてマー君のように突き刺さる憎悪を感じたはずだ。
「春海さんの言うとおりだろう。だけど、過去で神と呼ばれていた存在が、何かの理由でタチの悪い宇宙人に変わってしまった可能性もある。どちらにしても、ずっと遥か昔の時代から人間と関わってきたのだと思う。おそらくイエスも仏陀もマホメットも神と呼ばれた宇宙人だった可能性は高い。人間に真実を分かりやすく伝え、あれほど喜ばれ感謝されたのに、時が過ぎ去ると人間は大切なことを忘れてお祭り騒ぎだ。それでも少々のことには目をつむり許してきたのだろう、昨日まではね。だけどこの突き刺さるような憎しみは尋常じゃない。きっと取り返しのつかない過ちを犯したとしか思えない。人間は神に見限られたということだ」
 工藤さんは言い終えると腕組みをして考え込んだ。
「神様や仏様が宇宙人? で、今は憎しみを剥き出しにしてるって? 神様は人間を救うことをあきらめて滅ぼそうとしてるのね。そんな話信じられないわ」
 祐子の声が高くなった。
「昔は神だったとしても、今は憎しみの塊になったユーマ。つまりタチの悪い宇宙人だろう、そんなヤツらに勝手な真似されてたまるかよ」
 俺は苛立ちながら言った
「冷静に考えるとね、タチが悪いのは人間の方で、勝手な真似をしているのも人間だろう。ユーマ、つまり宇宙人は忍耐強く救いの手をさしのべてきたんだよ。よくよく考えてみれば分かることだよ。救いの手をことごとく裏切ってきたのは人間で、彼らから見ればいつも最悪の選択をしてきたのは人間だね、殺戮と破壊の歴史を見れば分かることだよ。しかもその酷さは増すばかりで、地球さえ壊しかねないところまでやって来た。もし私が神だったらとっくの昔に諦めて撤退しているね。そして報告するだろう。やり直しますって」
 工藤さんは言い終えると天井を見上げた。

「少し分かってきたような気がする。きっとみんなにも分かると思う。あの領域のことを思い出せばいいんです。虚空ですよ、極小だけど宇宙の全てが揃っているところ」
 栄二君が言うと、
「私もそう思う。答えは虚空にあるのだろう。あそこに行けば地球の過去も未来も、宇宙の全てが理解できるような気がする。しかも一瞬でね」
 工藤さんが栄二君を見ながら言った。二人の話は俺には理解できないし、取り残されたような気分がする。
「じゃぁ、宇宙の全てを理解したら助かるんですか?」
 俺が訊くと、
「そう簡単ではないだろう、理解することと現実は同じではないし、もう動き始めているからね」
 工藤さんが言った。

 

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