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第1章18 [宇宙人になっちまった]

「先生、父親が同じって事は、私の父は三年間の間に十六人の子どもを作り、私の顔を見ることもなく姿を消したってことなの? 私の父は婚約中に事故で亡くなったって聞かされたわ。だからシングルマザーだって。でも写真は残ってる」
 夢実が声を震わせるようにして言うと、誰もが似たような境遇だと分かってきた。両親と暮らしている人もいるが、それは母親が再婚したからで、実父は同じような状況だった。
「やはり君たちの父親がDNAの持ち主かも知れない。父親のことをできる限り調べてみよう。わかったことをここの全員で共有しようと思うがどうだろう。父親の写真を持っている人はアップしてもらいたい。好きな食べ物、趣味、出身地何でもいいから知り得たことは全てアップして共有しよう。もしかしたらどこかで生きているかも知れない。皆で協力して消息を確かめよう」
 後藤ドクターが話し終えると、近くにいる人同士で雑談が始まった。浜辺も敬一も夢実も血が繋がっていると聞かされたせいかもしれないが、妙な親近感を感じ始めた。生活境遇が似ているのも身近に感じるのだろう。
「先生、そういえば行方不明の三人はどうなったんですか?」
 雑談をしていた浜辺が急に思い出したように言った。
「まだ何の手がかりもつかめないようだね。警察からは病気のことを色々訊かれたよ。自殺の可能性を疑っているようだったが、僕はそんなことはあり得ないと思う。三年生だからサードブレインの成長はかなり進んでいて、脳研究にも協力していたんだ。成績も優秀で温厚な性格。急に姿を消すなんて考えられない。僕よりも君たちの方が何か聞いたりしているんじゃないかな」
 皆はドクターの話にざわついた。
「あの、僕はあの三人はそのうち何か起こすような気がしていました。多分みんなも同じように感じてたんじゃないかなぁ。先生の前では大人しくしていたかも知れないけど、僕らの前では横柄で威圧的でした。患者の会が出来た頃は仲間意識もあって仲も良かったんです。でも最近はいつも三人で固まっていて僕らを避けているような気がしていました。
 先月の例会のときにそれが決定的になる出来事があったんです。休みの日に全員で遊びに行く事になって三人にも声をかけたんです。そしたら、俺らはお前らとは違うんだ。下等な奴らとはもう付き合えないって言われたんです。いきなりです。それどころか、お前ら下等な人種は滅びる運命だと指をさして言われたんです。同じ患者仲間なのにですよ。あのときの顔と声は今思い出しても身震いするほどです。何かに取り憑かれたように表情が変わり、別人のようでした。あれ以来顔を見ていません。だから行方不明になったと聞いたとき、心配するよりもあの恐怖感を思い出しました。何かとんでもないことが起こりそうで心配です」

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