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第2章08 [宇宙人になっちまった]

「飲んでくれ」
 ドクターは短く言うと無糖コーヒーを口に運んだ。僅かにコーヒーの香りが漂い、皆も同じように飲み始めた。相当口が渇いていたのだろう、ほとんど全員が一気に飲み干した。飲み干すと、大きく肩で息をしたり身体をほぐすように動かしたりして、やっと我に返ったようだ。
「とんでもないことになったな」
 ドクターはそれだけ言うと皆をゆっくり見た。誰も口を開かずドクターの次の言葉を待っている。
「この会は僕の特殊な患者を集めて組織したものだ。君たちはパラカスの頭蓋骨のように特殊な遺伝子を持っている。地球外由来の遺伝子だ。その謎がエフという宇宙人の登場で解けた。それどころか円盤に乗って地球を見て、悪魔が実際に存在することも知った。こんなこと誰に言っても信用されないと思う。言ってもいいがバカにされるだけだろう。だが大事なのはこれからどうするかだ。あと八時間ほどでサードブレインが完成することも重要だし、サードブレインが悪魔に狙われると言うことも忘れてはいけない。僕には医者という仕事があるし、君たちは高校生で学校がある。今までの生活を続けていくことは大切だ。だけど、エフが言ったことを信じるならそれだけでは済まないだろうと思う。僕にも正直なところどうしていいのか分からないのが本当のところだ。僕にサードブレインは無いし、他にも二人いる。だけどここにいる全員が同じ仲間として今後のことを相談したいと思っている。まずここからスタートしてはどうかと思う」
 誰も口を開かない。何が始まろうとしているのか分からず戸惑いだけが目の前にある。今まで信じてきた世界、見てきた世界がまるで別物のように思えるし、自分に未知の能力が備わり宇宙人になるというのだ。おまけに悪魔に狙われている。何をどう考えればいいのか未完成のサードブレインはなんの解答も与えてくれない。
「あの、エフはこの会に参加できると思いますか?」
 浜辺が小さな声で言った。
「テレパシーみたいに思えば伝わるってエフが言ってたけど本当かしら。私がやってみていいよね」
 夢実はそう言いながら眼を閉じ、肩を二回ほど上下に動かすと眼を開けた。

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