SSブログ

新作、開始します。 [小説について]

 新作を開始します。かなり衝動的で、まだほんの少ししか書けていません。かつ、展開も何一つ定まっていません。とにかく港を出るのみです。どこへ向かうのか何一つ決まらず、風が止めば船は止まり路頭に迷ってしまいます。

 それでもとにかく踏み出してみようと思いました。途中で投げ出した話が2作あると思いますが、もしかしてこれが3つ目になるかも知れません。

 まぁ、とにかくやってみよう。それが私のすべてに通じるスタンスで。とにかくやってみる。踏み出してみる。後のことは進みながら考えて、ダメなら潔く諦めましょう。


 と言うことでスタートします。タイトルは 「二十三代目シャーマン海斗」です。いつまで続くことやら、正直ヒヤヒヤです。


 さて、そろそろ愛犬の散歩の時間だ。

散歩しながら、北斗七星と、カシオペア座を探して薄暗い北極星を見つけて喜んでいます。でも街の灯りが邪魔で、そう簡単には見つかりません。なので薄暗くなるまで散歩には出ません。愛犬が側で、早く早くと、唸っています。

 よし、やけくそでポチッとアップだ!!



ブックマークボタン
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

第1章の1 [二十三代目シャーマン海斗]


      仮題 『二十三代目 シャーマン海斗』


 京都五条通りから国道九号線を経て西へと進む。京都は市街地を抜けると景色が一変する。ここが同じ京都かと思うほどの山の中を走り出すのだ。そしてすぐに老ノ坂峠にさしかかる。高速道路が整備されるまでは、京都と丹後地方を結ぶ唯一の幹線道路で、明智光秀は夜間に一万余りの軍勢を率いてこの老ノ坂峠を越えて本能寺を目指したのだ。更に時代を溯ると、この辺りは魑魅魍魎の支配する異世界でもあった。

 昼間は交通量も多くごく普通の峠道だが、夜も深くなると交通量は減り、ヘッドライトの届かない闇に得体の知れない物の怪が潜んでいるのではないかと思う。時代は変わろうと、異世界の者は今もなお、闇に紛れ科学文明をあざ笑いながら生き続けているのかも知れない。

 汐見海斗は眠い目を擦りながらヘッドライトの先を睨みながらハンドルを握っている。幾度も通った道ではあるが、気がつけば肩に力が入っている。後もう少しで峠を越える頂上のトンネルが見えてくるはずだ。あのトンネルを抜ければ視野が開け、妙な緊張感から解放されるだろう。

後続車はなくトンネルの中には汐見の車のエンジン音だけが響いている。もう少しで出口と思ったその瞬間、目の前が一瞬にして真っ白になった。反射的に右足が動いてブレーキを踏んでくれたが、上半身はハンドルを強く握ったまま固まっている。彼は目を見開いて前方を凝視したが何も見えない。まるで真っ白な闇だ。

 スリップ音が響き、センターラインを超え斜めになって停止すると、何事もなかったかのように視野が戻った。 汐見は慌てて前後の安全を確認すると、大きく息を吐きながら車をゆっくり動かしてトンネルから出た。

 車にも異常はなく、エンジンも照明装置も問題はない。用心しながら徐々にスピードを増して長い下り坂を走り出した。汐見はトンネルの中で自分に何が起きたのか理解できない。脳内の異変であんなことが起きるだろうか、何の兆候もなかったし、何の後遺症も感じない。自然現象であんなことが起きるとはもっと考えにくい。だとすれば、やはり自分の中に原因があるのだろうか。汐見は遠目ライトに照らされた長い下り坂の先を見ながら、さきほどの出来事を思い返した。

ブックマークボタン
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

第1章の2 [二十三代目シャーマン海斗]


 汐見は遠目ライトに照らされた長い下り坂の先を見ながら、さきほどの出来事を思い返した。

 明らかに目の前の空間が真っ白になったのだ。濃霧とか煙とかではない。彼は濃厚な乳の海に沈められた自分を想像した。


 遠くに人家が見え、その灯りを目指すように車を走らせているが、汐見は得体の知れない不安が心の中に忍び寄っているのを感じた。耳の奥に妙な音が響いているからだ。耳鳴りとは明らかに違う。それはひそひそと耳元で話しかけているようでもあり、エンジン音や風切り音に混じって脳内に侵入してくるようにも思えた。目の前が真っ白になったことと関係があるのだろうか。

 緩やかにカーブした下り坂の終わりに信号が見えてきた。あの信号を過ぎれば道は平坦になり道幅も広くなる。いつもなら信号を過ぎるとアクセルを踏み込むのだが、先ほどの異変を思うと余りアクセルを踏み込めない。気がつけば汐見の車を先頭に数台が後ろに続いている。車間距離を詰めてくる後続車に苛立ちながら、コンビニの駐車場に車を入れて後続車を先に行かせた。


 汐見は東京の会社を定年退職した後は田舎暮らしをするつもりだったが、いざとなると家族を連れての移住は難しかった。しかし思い出の詰まった場所でもあり、可能な限り実家を維持することにした。今回の帰省は伸び放題の雑草を刈るためだ。

 あの異変のせいで予定よりも遅れて無人の実家に到着すると、玄関のセンサーライトが眩しいくらいの光で迎えてくれた。エンジンを止め、大きく息を吐いて辺りを見廻した。あの異変が気になりずっと緊張してハンドルを握っていたのだ。いつも通りの実家の玄関が目の前にある。

 玄関を開けるとすぐに仏間に入り、古い大きな仏壇の扉を開けた。先祖代々の位牌と過去帳が並び、中央には古びた曼荼羅が安置してある。相当古いものだと父親から聞いたが、今となってはそれ以上のことはわからず、もっと詳しく聞いておけば良かったと思う。信仰心があるわけではなく、子供の頃からの習慣で、どこかから帰ったときは真っ先に仏壇に報告に行き、余所から何かを頂けばまず仏壇に供えるのが当たり前なのだ。いつもなら形式的に手を合わせ一礼して済ますのだが、今日は古びた曼荼羅を見ながら、老ノ坂峠の異変を報告し、守って頂いた礼を伝えた。そうやって形だけでも話しかけると、どこかに届いているような気がしてくるから不思議だ。何かを信じているわけではないが、そんなことが子供の頃から染みついているのだ。

ブックマークボタン
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

第1章の3 [二十三代目シャーマン海斗]


 何かを信じているわけではないが、そんなことが子供の頃から染みついているのだ。


 翌日、汐見は昼前まで眠ったが、暑さで身体が汗ばみその不快さで目が覚めた。家の周りの草刈り作業が待っているが、八月炎天下での作業は自殺行為だ。夕方まで待って作業をするのが正解だろう。慣れた地元の人なら苦も無く作業を終わらせるのだろうが、都会暮らしが染みついた定年退職者の汐見にはそんな真似は到底出来ない。諦めて蔵の中の点検作業をすることにした。築年数が百年を超えているこの家も、汐見の子供たちの関心が無くなればいずれ処分せざるを得なくなるだろう。裏にある壁の朽ちかけた蔵の中も整理しなければならないだろうが、価値のあるものはあまり期待できない。家系は古くて海斗で二十三代目になるが、それほどの名家でもなく特筆するようなことはない。何かあるとすれば、代々汐見家の当主は、地域のシャーマン的な役割を担ってきた事くらいだ。それだって年に一回の秋祭りで少し注目される程度で、何かしらの特殊な力があるわけではない。形式的にその役割を果たしているだけだ。今までは父である儀作が若い頃からその役割を務めてきたのだ。春にその父が急死して、隣家の源三さんから祭りの話は聞いていたが、銀行関係や相続関係、幾つかの証券などの手続きに追われすっかり忘れていた。蔵の中に入ってそのことを思い出したのだ。

 秋祭りは十月の十日で、その前夜から祭りが始まるのだ。汐見家の役割はその前夜に行われる儀式を仕切ることが重要で、翌日は黙って立っていればそれで済むようだ。何度かその話を父から聞いたが、興味がないからあまり覚えていない。退屈極まりない形式的なことばかりで、覚えていることは、とにかく蔵にある文書に書いてある通りにすればいいと言うことだけだった。余計なことは考えずに型通りにやればいいのだろう。

 海斗はその文書のしまってある場所を聞いたはずだが思い出せない。蔵には二階があり、一階には古い使わなくなった箪笥などの家具や物入れ、行李などが積み上げてある。おそらく一階にはないだろうと見当を付け二階を見上げた。子供の頃は二階に上がることは禁じられ、十八からは東京暮らしで蔵の中には何の興味も関心も無かった。汐見はこの歳になって初めて二階の裸電球に照らされた薄暗い室内に入ったのだ。壁面はすべて三段の棚になり、数多くの食器や調度品がきちんと整理され置いてある。それ以外には様々な小物や掛け軸、書物が整理して保管されている。おそらく父の言う文書はその書物の中にあるのだろう。

ブックマークボタン
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

第1章の4 [二十三代目シャーマン海斗]

 

書物が整理して保管されている。おそらく父の言う文書はその書物の中にあるのだろう。
 汐見はそれらの書物や文書綴りの山を一つ一つ手に取って確かめた。おそらく五百年は経過しているであろう和紙の綴りはかなり変色し、所々に染みや破れが目立つ。郷土資料館に持ち込めば貴重な資料なのかも知れないが、ほとんどの文書は冠婚葬祭に関するものや、お金と土地に関するものが大半のようだ。全体をよく見ると、ある程度は年代別に整理されているように見える。和紙の劣化の程度をみれば新しいものは一目瞭然だし、隣には彼にも見覚えのあるノート類が束ねてある。おそらく父、儀作の残したものか、祖父の薫のものだろう。冠婚葬祭など外部との関係の記録は儀作の代でも毛筆で書かれているが、それ以外の個人的なものは鉛筆や黒インク、新しいものはボールペンで書かれていて、ほとんどが日記帳だと思われる。表紙には小さな字で記録と記されその下に年月日が書いてある。手に取ってページを開くとつい読み込んでしまう。これではいつになっても目的のものは見つけられないだろう。むき出しで束ねられたものから、行李に入れられているものや、木箱に保存されているものなど、保管方法は様々で代々の当主が重要性を判断したのだろう。
 日記はひとまず置いて、もう一度全体を眺めてみると、三段目の棚の角に黒漆塗りの箱が目に留まった。埃を被ってはいるが、全体に漂う重厚感が汐見の目を惹きつけた。かび臭い古びた蔵では居心地が悪そうに見える。母屋の上品な床の間が似合うだろう。そう思いながら首を伸ばして棚を見上げた。それほど大きくはなく、半紙が入る程度の大きさで高さは二十センチほどだろう。角は装飾を施した金属で守られ、上部の蓋には鍵穴が見える。両手で持つと思ったよりも重く感じ、ゆっくりと足下に下ろした。鍵はかかっているが、単純な構造で家にある工具と少しの技術で開けることが出来そうだ。
 汐見は埃を落とすと蔵から持ち出し、リビングのテーブルの上に置いた。おそらく必要なものはすべてこの中に保管されているに違いない。
 汐見は漆塗りの箱に付いた埃と汚れを丁寧に取り除くと、もう一度その重厚感を味わうように眺めた。見れば見るほど惚れ込んでしまうような漆の光沢と完成度の高さが安易に触らせないようなオーラを放っている。四隅の金属も錆びずに鈍い輝きを保っている。丹念に鍛えられた和釘や日本刀のようだ。

ブックマークボタン
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ: