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退行催眠(6) [小説 < ブレインハッカー >]

死後の世界が教える「人生はなんのためにあるのか」―退行催眠による「生」と「生」の間に起こること、全記録 死後の世界が教える「人生はなんのためにあるのか」―退行催眠による「生」と「生」の間に起こること、全記録 (単行本(ソフトカバー))
マイケル ニュートン (著), Michael Neuton (原著), 沢西 康史 (翻訳)

 読む価値はあると思います。

ただ、こういう世界には、怪しげな物も多く、注意を必要とします。

特に退行催眠については、市中に、過去世がどうのこうの、宣伝文句を連ねた店があり、また、催眠術自体が、何の評価基準もなく、一定の技術水準を保証した資格制度があるわけでもなく、尚更注意が必要です。

 まさに玉石混合なのですが、中には優れた人、物、人生を変えるような真実もあるのではないでしょうか。

生きる意味の探究―退行催眠が解明した人生の仕組み

 

生きる意味の探究―退行催眠が解明した人生の仕組み (単行本)
グレン ウィリストン (著), ジュディス ジョンストン (著), Glenn Williston (原著), Judith Johnstone (原著), 飯田 史彦 (翻訳)

 

 

 

                        退行催眠(6)

 次の日曜日、伸也は由美と一緒に潮見のマンションを尋ねた。君たちの過去に関係があるから是非来て欲しいということだった。
 部屋の中に入ると、潮見の他に数人がいて、皆二人を歓迎してくれた。二人のことは皆知っている様子で、親しげに声をかけてくる。先生とどういう関係なのかと思いながら挨拶を交わすが見当もつかない。

「実はここにいる人は伸也君に関係のある人ばかりなんですよ」
「私とですか」
 伸也はもう一度部屋の中を見回したが、見覚えのあるような顔は一人もいない。
「すみません、ちょっとよく分からないんですが」
「いや、それが分かればすごいことですよ。実はここにいる人は皆、酒呑童子に関係のある人なんです」

 潮見はそう言うと、一人一人を紹介し、今までの経緯を説明した。潮見が信じられなかったと同じように、伸也もこの人たちが危険な連中に追われ、命まで狙われているとはまるで映画のストーリーを聞いているような気がした。
「とにかく見て貰いましょう」
 と、達夫がうやうやしく小箱から石を取り出し、手の上に乗せて伸也に見せた。
「これは……」
 伸也は一目見て分かった。退行催眠で見た石と同じなのだ。形は小さいが深い青色をしたこの石に間違いない。
「どうしてこの石が………」
 とだけ言うと、それ以上何も言えなかった。
「見覚えありますか」
 と達夫が遠慮がちに声をかけると、
「ええ、遠い記憶の中で確かに見覚えのある石です。見つめていると何かに呼びかけられているようで、心がざわざわ騒ぎ出すような感じがします」

 伸也は達夫から石を受け取ると、両手で包み込み静かに目を閉じた。一瞬目眩のようなものを感じたが、それはいつもの幻覚とは違っていた。圧倒的な力の源に触れたような感じがする。膨大な感覚、感情、知識、経験、あらゆるものが洪水のように流れ込んだ。目眩は脳細胞がたじろいだのかも知れない。皆は黙って伸也を見つめている。伸也は大きく深呼吸をして目を開けると、
「とても不思議なのですがやっと分かりました。私はこの石を何度も見て、触れて、そして助けられたこともありました。この石に自分の深いところにある何かが共鳴するんです。命そのものを感じているような気がします。この石が私の何かを刺激してそんな風に感じるんだと思います。この石は何というか、クリアーな命にアクセスするための端末のような感じですね。言葉にすると上手くいえませんが、それは明確なイメージとして伝わってきます」

 そう言うと達夫を見て、
「この石はどこにあったのですか?」
 と訊いた。
 達夫は石を受け取るとうやうやしく箱にしまい、
「私の家に代々伝わってきたもので、大切にされてきました。言い伝えでは酒呑童子の持ち物で、最後の戦いのときに割って仲間に与えた物だと言われてきました」
 そう言うともう一度その石の入った箱を見つめた。
潮見は小さく首を傾けると、
「確かに伸也君は童子の時代に生きていた記憶を持っているのかもしれないし、その石は童子のものかもしれません。だけどその小さな石に特別な力があるようには見えませんが………それと、明確なイメージとは、何のことですか」
 と潮見が訊いた。
「つまり………イメージで伝わってきたのは、支配と協調がこれ以上共存できなくなってしまったということです」

「支配と協調……ですか?」
「ええ、支配と協調です。これは私が受け取ったイメージなので別な言い方もあると思うのですが………人間と自然と言ってもいいと思います。その関係がもう限界にきて、人間はある一線を超えてしまったんです。人間よりも自然のほうがずっと敏感でそして、明確な意思を持っているんです。自然にも地球にも宇宙にも意思が存在するんです。人間の心に起きたどんな小さな変化も自然は見逃さず受け止めているんです。その意思はそれをすべて感じ、そして応えているんです。人間が鈍感なだけなんです。どんなことにも応えてくれているのにそれを感じようとしないのが人間なんです。いや、それどころか人間以外に意思があることさえ認めようとしないのですから」

 

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