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第3章1 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「それはサークルの仲間も同じ考えで、最初はみんなそう思ったわ。専門家の診断を仰いだわけじゃないけど、二人とも模範的と言っていいくらい立派な社会人で、責任ある仕事をしているし何の問題もないわ。もちろん人格とか性格とかもね。結論を言えば、サークルの仲間は信じたわ」
 紗羅の顔に強い意志が浮かんでいる。
「なるほどね、そういう話に真偽を確かめもせず飛びつく人は多いけど、紗羅のサークルの人たちは違うってことだね」
カズは沙羅を見て言った。
「そうよ、興味本位だけの人はいないわ。自分の見たことや経験したことに真摯に向き合う人たちばかりだと思う。だから私は仲間を信頼しているの。でも自分で確かめるのが一番だと思うわ。ここに呼んでもいい?」
 紗羅が訊くと、カズはいつでもいいと応えた。
         第三章
 桜の花びらが舞い始めると、心がざわざわと落ち着きをなくす。紗羅はこの時期が苦手でついつい部屋の中に閉じこもってしまう。今まで仕事が長続きしなかったのはこの時期を乗り越えられず、五月に限界を迎えて仕事を辞めてしまうからだ。
 サークルの友達をカズの家に連れて行くと言いながらまだ実現していない。ビザールにもしばらく顔を出していないし、祐介とも連絡を取っていない。祐介から連絡が来ないのはきっとカズから様子を聞いているのだろうと紗羅は思っている。だから自分からも連絡しない。落ち着いてくるのは梅雨に入る頃からだけど、今年はもっと早く動けそうな気がしている。
「紗羅に宅急便が来たわよ」
 母の呼ぶ声で、まどろんでいた体がピクンと反応した。時計を見ると時計の針は午後二時を示している。アマゾンでポチした記憶はないし、何だろうと階下に下り、玄関脇に置いてある小さな包みを手に取った。
 差出人を見ると、飯野淳子と書いてある。サークルの友達でカズの家に連れて行くと約束している人だ。十歳ほど年上で、出版社で働いている。特に思い当たる節もない。何を送ってきたのだろうか。紗羅はガムテープを剥がしながら部屋へ戻った。大きさは十センチ四方の紙製の箱のようだ。中を開けるとクッション材に何かが丁寧に包まれ、その横に四つ折りになった紙が見える。クッション材の中身が気になり包装を解くと、中から青い小さな塊が出てきた。ピンポン球くらいの大きさで、完全な球体ではなく、所々に凹みが見える。これは一体何なのか、紗羅は手の平に乗せてあらゆる角度から眺めてみたが見当が付かない。折りたたまれた手紙を広げると、淳子さんらしい丁寧に書かれた文字が並んでいた。


タグ:UFO
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