SSブログ

第3章7 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「なんて言えばいいんだろうね、今日はUFOに乗った生々しい体験談を聞くはずだったけど、予想とはかなり違ったね。俺はね、昔の映画で未知との遭遇で観たような異星人を想像していたんだ。円盤の中にそんな異星人がいてね、握手で迎えてくれたのかなと。嘘でもそんな話を聞きたかったね。でも現実は俺の頭脳の遙か向こう側にあるんだね。話を聞きながら一つ思ったことがあってね、希良さんの言った完璧な静寂という感覚は、異星人も同じように感じているんじゃないかと思ったんだ。異星人は完璧な静寂という共通の感覚を伝えようとしているんじゃないかな。何かとても重要なことかも知れないね。ちょっと興味がわいてきたね。異星人の姿形がどんなだろうかなんてことは取るに足らないことのように思えるよ」
 カズはそう言うと次の盤をターンテーブルに乗せた。
「ところで、希良さんは飯野淳子さんと話したことある?」
 紗羅が訊くと、顔を知っているだけだと答えた。紗羅は淳子から宅急便で送られてきた青い石のことを話した。希良が何か知っているのではと思ったのだ。
「私は屋上に下りたときは何も持っていませんでした。でもそんな石を持ち帰った人がいるとは知りませんでした。もう少しサークルに出ていれば話せたかも知れませんね」
 希良が残念そうに言うと、
「おいおい、それってとんでもないことだぞ、そんな石を持っていて大丈夫なのか? 爆弾とかじゃないのか、地球が一発で滅びるほどの」
カズが手を大きく動かして言った。
「残念だけど爆弾じゃなさそうよ。でも重要なメッセージだと思うわ。大統領でも学者でもない無名の淳子さんに持たせたことも何かのメッセージだと思うわ」
 紗羅が言った。
「何かのメッセージだとしても、異星人は相手を間違えたんじゃないかな。飯野さんや俺たちじゃ、メッセージを読み解けないし、仮に読めたとしても何もできないと思うよ」
 祐介が言った。
「ここにいる沙羅さんと祐介さんはUFOを間近で見たことがあって、私は乗ったことがあって、ここにはいないけど、飯野淳子さんは不思議な石を持ち帰りました。マスターはここのオーナーで、この場所で私たちは知り合いました。私はあれからずっと考えていたんです。UFOはなんで私を乗せたんだろうって。なんの影響力もない平凡な私なのかって。答えはまだ見つかりません。でもさっきのカズさんの言葉を聞いて思ったことがあるんです」
 希良はそこまで話すと大きく息を吸った。

タグ:UFO
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。