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第5章3 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「見て」
 希良が小さな声で言った。
「来たわね、少し時間かかったけど」
 紗羅が言った。
「昔見たのと同じだよ。懐かしい友達に会ったみたいだ」
 祐介は嬉しそうに言った。高校生の二人は身体を寄せ合うようにして見上げ、カズは口を大きく開け、みち代は慌ててバッグから小さな箱を取り出した。
 見上げた十メートルほど先に銀色のUFOが浮かんでいる。直径は十メートル前後だろう、何の音も立てず、静かに紗羅たちを見下ろしているようだ。紗羅たちも黙って見上げている。
「下りてくるわ」
 希良が言うと、皆はゆっくり後ろに下がり着陸場所を空けた。青い石は紗羅が持っている。UFOはゆっくり降下し、皆に囲まれるように着地した。円盤の中心部の高さは三メートルほどだが、どこにも出入り口や窓のような造形は見当たらない。すべてが曲面で覆われ場所による色の違いもない。この中に異星人が乗っているのだろうか。
「本当に来てくれた……ということは、みんなの思いが届いたってこと?」
 カズが円盤の縁に手を伸ばしながら言った。
「気持ちは通じるって。異星人がそう言ってる。みんなも聞いたよね」
 紗羅が言った。
「出てくるのね」
 希良が小さな声で言った。皆もわかっている。カズは亀のように首を伸ばして円盤の中心部を睨んでいる。出入りできそうな場所が見当たらないのだ。
「どこから? どうやって?」
 カズは円盤を観察しながら言った。皆も同じ気持ちで円盤を眺めている。だがその観察は無駄に終わった。カズが気づいたときには円盤の中央から少し外れたところに二本足で立つ異星人を見つけた。呆然と見つめる皆の視線のなかをゆっくり歩き、円盤の端に腰を下ろした。
「初めまして。みんなのことは昔から知ってたよ。今まで色んなことしてきたけどね、みんなの気持ちが伝わってきたのは凄く嬉しかったよ。これからは僕たちの仲間になってくれるよね」
 円盤の端に腰を下ろした異星人は口を動かして話した。口の動きと出てくる音声に矛盾はない。

タグ:UFO
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