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第5章5 [メロディー・ガルドーに誘われて]


 異星人から太郎君になると、円盤の端に腰掛けていることすら当たり前の光景になって、色々な質問が太郎君に浴びせられた。特に熱心に質問していたのはカズで、まるで私立探偵の身辺調査のようだった。どこから来たのかという質問には、大体二百万光年離れたところと答えた。家族はいるのかとか、何を食べてるのとか、学校はあるのかとか、どうやって生活しているのとか、大半は暮らしぶりについての質問ばかりだった。太郎君の本当の姿がは虫類でなければ、見た目からして似たような遺伝子を持っているかも知れない。祐介がそのことについて訊くと、太郎君と地球人の遺伝子は九十九パーセントは一致すると言った。本当の姿はもう少し違うようで、全身を包む皮膚は服を着替えるように、地球上で過ごしやすく親しみやすい見た目にしていると教えてくれた。宇宙線の影響が強いらしい。驚いたのは地球人の遺伝子のルーツは地球外由来だと言ったことだ。自分たちの遺伝子は地球人の専売特許ではなかったのだ。太郎君と地球人は兄弟のようなもので、ルーツは同じ遺伝子らしい。進化上は太郎君の方が先を進んでいるようだ。質問が落ち着くと、みち代が待ちかねたように話しかけた。
「あの、私からプレゼントがあるんだけど、受け取ってもらえるかしら」
 そう言ってバッグから小さな箱を取り出し太郎君の前に差し出した。太郎君はありがとうと返事をすると、箱の蓋をそっと開け小さな手を中に入れた。中から取り出されたのは、和紙で折られた小さな折り鶴だった。
「これは?」
 太郎君は目の前で色々な角度から見ている。
「折り鶴よ、美しいでしょう、一枚の紙から出来ているのよ」
「これで何をするの?」
「何もしないわ、どこかに飾って眺めるの。それだけよ。」
 みち代は優しい声で言った。
「飾るって意味がよくわからないけど、でもみち代さんの声と同じで優しい感じがするね」
 そう言うと鶴を円盤の上に置いた。
「折り鶴って確かに海外では評価されてるけど、太郎君は地球外だよ、わかるかなぁ」
 カズが折り鶴を見ながら言った。
「太郎君には地球に来た目的があるんでしょう?」
 紗羅が訊いた。

タグ:UFO
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