SSブログ

第3章2 [メロディー・ガルドーに誘われて]


『お元気ですか、この季節は少々苦手で早く落ち着かないものかと思っています。きっと沙羅さんも私と同じような毎日を過ごされているのかと想像しています。
 沙羅さんの知り合いのカズさんのお宅を訪問するのを楽しみに待っていましたが、急に思い立ち旅行に出かけることにしました。出かけると言うよりも、この季節の日本から脱出したいというのが正直な気持ちです。沙羅さんにも時々話していました世界一周の旅です。予算は二百万と心細いのですが、何かに急に背中を押されたような気がします。
 それから、その青い塊はまだ誰にも話していません。私がUFOに乗り、戻ったときに手に握っていたものです。自分でもいつの間にこんな物を握ったのか記憶にありませんし、この青い塊の正体は不明です。沙羅さんにこれを送ったのは、なんと言えばいいのでしょうか、これを持ち続けることに少し疲れたのです。これが部屋の中にあるだけで、脳内のどこかが常に研ぎ澄まされているような感じがするのです。しかし、旅の間、部屋に置きっ放しにするのも妙に心配なのです。それで、私が旅から戻るまで沙羅さんに預かっていただきたく一方的に送ってしまいました。自分が疲れたから持っていて欲しい、旅行に行くから預かって欲しいとは、自分でも呆れてしまう言い草ですが、それでもなぜか、沙羅さんにしばらく持っていて欲しいと思ったのです。もしかしたら私よりも沙羅さんが持つ方が正解なのかも知れません。本当に勝手なことを言って申し訳ありません。よろしくお願いします。身勝手な振る舞いをお許し下さい』
 紗羅は手紙を読むと、もう一度その半透明の青い塊を色々な角度から注意深く観察した。
材質は石のようでもあるし、何かしらの樹脂製のようにも見える。指先で擦るようにすると、ガラスのような滑らかさが伝わってくる。淳子さんは脳内のどこかが刺激されるようだと伝えているが、紗羅にはその感覚はわからない。しかしUFOから持ち帰ったというのが真実なら、人類史上最大最高の出来事であることは間違いない。そんな代物を紗羅に預けようというのだ。本当ならこの変な塊は厳重なセキュリティに守られ、世界中の天才たちの頭脳を使って分析され研究されて当たり前なのだ。それを淳子さんは宅急便で送りつけてきたのだ。紗羅はしばらく考え込んでしまったが、淳子さんの言うとおりに自分が保管するしかない。こんな小さな石ころ一つ、引き出しの奥に放り込んで置けばいいのだが、妙な存在感に紗羅の心がジワジワと圧迫されているのを感じた。

タグ:UFO
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。