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第7章12 [宇宙人になっちまった]

「人間はバカなのに。サードブレインさえいなければ……」
 鎌田重蔵はそう言うと床に座り込んだ。
「ワシも終わりってことだな、もう十分だ。楽しませてもらった。戦争とか公害とかね、たくさん苦しめて殺してやった。最後の仕上げに一千万人くらい殺そうかと思ったがね、邪魔が入ったのは想定外だった。もう年だからどっちみち長くはない。また生まれ変わればたくさん殺しを楽しめるだろうよ。死ぬのが楽しみだな」
 鎌田重蔵はそう言って笑った。
「悪魔って相当バカなんだね、悪魔の生まれ変わりって見たことないよ。悪魔は最後の形態だから後がないんだ。もう一度新しい命で蘇るなんて無理だよ、ハッハッハッ」  
 エフはまたお腹を抱えて笑った。
「ワシの殺した命は循環しているはずだ」
 鎌田重蔵はムキになって言った。
「そうだよ、命の循環は宇宙の真理だからね。でも君は違うよ。例えて言えばね、命の色がだんだん黒ずんでね、とうとう真っ黒になって生まれてくるんだ。それが君、悪魔だね。最後の形態さ。真っ黒になって生まれた命は二度と循環しないのが法則さ。命が終われば永遠に苦しみ続けるよ。苦しみに終わりがないんだ」
 エフは鎌田重蔵の瞳の奥を覗き込みながら言った。
「違う! 嘘を言うな!」
 鎌田重蔵は顔を引きつらせた。
「嘘か真実か、自分が一番よくわかるよ」
 エフが言うと、鎌田重蔵は首を横に振った。
「小僧のくせに、生意気なことを言うな!」
 鎌田重蔵は吐き捨てるように言った。
「小僧だって、ハッハッハッ。君は面白いことばかり言うね。君は人間の身体で八十年くらいだよね。たった八十年だよ、だから何にも知らないんだ。僕は君の何倍もあるよ。百年でも小僧だね、ホントに笑えるね」
 エフは微笑みながら言った。
「どうせすぐ死ぬんだ、ほっといてくれ」
 鎌田重蔵はそう言うと床の上に横になった。
「ホントに子どもだね、何にも知らない。チャラにはならないんだ」
 エフは困ったように言った。

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