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第5章2 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「これって絶対友達に見られたくないわ」
 高校生の由香が言うと、みんなも口々にかっこ悪いとか恥ずかしいとか言って笑った。
「恥ずかしくてもかっこ悪くてもやるわよ。やることは簡単よ、自分が見たUFOを思い浮かべるの、そして心の中で呼びかけるの。私はここにいます、来て下さいって。ただそれだけよ、簡単でしょう」
 紗羅はそう言うと目を閉じ、皆も同じように目を閉じて静かになった。聞こえるのは近くの鳥のさえずりや風に揺らされる小枝の音、遠くの方から救急車のサイレンも聞こえてくる。祐介はそれらの音を感じながらUFOを思い浮かべた。知らない人が見たら怪しげな新興宗教のように見えるかも知れない。祐介は自分のしていることが馬鹿げているように思えるが、心のどこかではUFOに来て欲しいと思う気持ちは、時間と空間を超えて通じるような気がしている。常識的には単なる思い込みだとか、根拠がないとか言われそうだが、むしろ広い宇宙ではそれが当たり前の常識なのかも知れない。光よりも早く伝搬する何かがありそうな気がする。
 紗羅は自分の呼吸が次第にゆっくりになるのを感じていた。頭部に五月の太陽の熱を感じるが、それ以外に妙な熱感を頭頂部に感じ始めた。痺れるようでもあり、微細な振動のようにも感じる。その振動と熱感が徐々に強くなり、ついにその部分から熱が飛び出していくのを感じた。一度飛び出すと一気に口が開き、まるで怒濤のようにあふれ出した。紗羅は自分の体の異変に驚いたが、頭の隅では冷静に観察を続けていた。飛び出したエネルギーの源をたどると、それは紗羅の身体を貫き地中奥深くにまで続いていることがわかった。それは無限のエネルギーのように感じる。今まで味わったことのない充実した感覚だ。
 カズは皆と同じように目を閉じ、UFOに来て下さいと数回心の中で念じてみたが、そんなことでUFOが来るとは思えず止めてしまった。それからは昔やりかけたヨーガ瞑想を思い出しながら呼吸を整えることに集中し始めた。
 みち代はUFOを見たことはないが、UFOも異星人も身近なところにいると思っている。だから今回の試みは誰よりも積極的で楽しみにしている。UFOが来て、異星人と出会った時のために、中身は誰も知らないが、小さなプレゼントの箱まで用意している。
 他の若いメンバーも静かに目を閉じて動かない。真面目に念じているのだろう。祐介はどのくらいの時間が過ぎたのかわからなくなってきた。目を開けると太陽は西に傾き始めている。時計の針は三時半を過ぎている。もう二時間近く座っていることになるだろう。腰も怠くなってきたし、組んだ足も辛くなってきた。目を開けているのは祐介だけで、皆は体を動かしてはいるが目は閉じたままだ。祐介は体の怠さが取れるともう一度目を閉じて、気持ちを集中して念じた。

タグ:UFO
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