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第2章 変化(1) [小説<物体>]

                           第2章   変化(1)

「キャー!」
 翌朝、祐子の悲鳴で飛び起きた。
「な、何なの!」
 俺の横で祐子の指さす方を見ると、物体のあった場所に細長く横たわるモノがある。
それは色粘土で作った人形のようにも見え、首のようなくびれと手足のように細長く伸びている部分もある。マーブル模様は消えているが、色粘土が混ざり合ったようになっている。
「祐子、何かした?」
「何にもしないわよ、見てただけよ」
「でも話しかけてたよね」
「女の子は人形にだって話しかけるわ、ただそれだけよ。私が何かしたって言うの?」

 とにかく気味が悪い。どんな工具を使っても傷一つ付けられなかったあの物体が勝手に形を変えたのだろうか。どう考えてもあり得ない。用心深く近寄り触ってみると、表面の感じは前のようにツルツルして堅い。どうやったって人の手で形を変えるのは不可能だろう。だとすれば物体が勝手に形を変えたことになる。

「こいつ、生きてるってことか?」
「生きてるって?」
 祐子は横目で物体を見ながら訊いた。
「だって、勝手に形が変わるわけないだろう。それに人間の形になろうとしてるし、意志があるってことだろう?」
「じゃぁ、動物なの?」
「なんだかわかんないけど、とにかく生きてて意志があるってことだけははっきりしてると思う」
「動物なら飼ってみようよ」
 祐子の気持ちの切り替えの早さには正直ついて行けない。さっきまで気味悪そうに見ていたのに、意志のある生き物だと聞いただけでもうペットにでもするつもりになっているのだ。
「飼うって、簡単に言うけど安全かどうかも分からないんだよ。それに此処は俺の部屋だからね」
「じゃぁ、私が一緒に住んで世話するから。それならいいでしょう?」
 祐子は勝手に可愛いペットと思い込んでいるようだが、今のところ動き出したりする様子はないからしばらく様子を見るくらいはいいだろう。俺もこの先どうなるのか興味はある。
「でもこのままじゃ不安だから、犬用のケージを買って中に入れてくれるならいいよ」
 そう返事をすると、
「わかった、今日買ってくるね」
 祐子は嬉しそうに返事をして、俺と同じように用心深く近寄り頭のように見える部分に触れている。初めて見たときは悲鳴を上げていたのに、一体どんな神経をしているのだろう。

 

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