SSブログ

第3章03 [宇宙人になっちまった]

 翌日の朝、敬一のスマホが耳障りな音を響かせている。思い出した。グループラインに違いない。半ば無意識に操作すると夢実の声が飛び込んできた。
「凄いよ、サードブレイン完成したみたい。そっちはどうなの?」
 夢実のはしゃいだ声が隣の部屋まで届きそうだ。
「エフは世界が違って見えるって言ってたけどね、それほどでもない感じ」
 敬一は眠い目を擦りながらスマホの画面を見ながら言った。
「どうしたその頭!」
 敬一は画面をもう一度覗き込むように眺めた。確かに夢実の顔に間違いないが、その上に真っ赤な頭が乗っている。
「ああ、これね、不思議なのよ、歯磨きしながら髪染めのこと考えてたらね、じわじわ色が付いてきたの。面白がって見てたら真っ赤になっちゃった」
 夢実はそう言いながら髪の毛を撫でている。
「サードブレインは髪まで染めるのかよ」
 敬一が呆れたように言うと、
「私の方が完成度高いみたいね、絵里子見てる?」
「見てるよ~今日から別人ね」
「学校行けねえぞ!」
 陽介が叫んだ。
「いいのよ、すぐ戻せるから」
 そう言うと、まるで手品でも見るように赤から元の色に戻った。
「夢実! 何がどうなったのよ、大丈夫?」
「大丈夫だと思うわ。エフは恐ろしい悪魔の顔を思い出すって言ったけど、全然なのよ、面白いことばかり、学校で話すね。敬一はどうなの?」
「まだ目が覚めたばかりだからね、何も起こらないよ。君とは違うかも。俺も悪魔は見なかったな」
「なんだよ、頭からビーム出るかと期待したのに」
 陽介が落胆したような声で言った。本気でビームでも出るかと思っていたのかも知れない。
エフの話は、まるでスーパーマンにでもなりそうに思えたからだ。
「がっかりするなよ、まだこれから何かあるかも知れないしね。そのうちビーム出してやるよ」
 夢実はサードブレインの変な片鱗を見せたけど、敬一は目立った変化は無いようだ。エフの言うように、人類とのハーフだから予想とはかなり違うのかも知れない。しかし、いずれにしても悪魔は着々と破滅に向かって準備をしているのかも知れない。それを知るのは未知の宇宙人エフと、この頼りない高校生たちなのだ。朝の短時間で様子は少し分かったが、物足りない感じだ。時間が経つと他の変化もあるかも知れない。学校が終わったら桜ヶ丘公園で会うことになった。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。