SSブログ

第3章02 [宇宙人になっちまった]

「俺もそのこと考えてた。エフにもっと詳しく聞いておけば良かったよ。そうだ、訊けばいいんだよ、夢実さんもう一度訊いてくれる?」
 夢実もそのことに気がつき、すぐに目を閉じてエフに話しかけた。やはり肩を二度ほど上下させると眼を開けた。
「何も心配することないって。いつものように眠っていつものように目覚めたら完成らしいよ。私たちのサードブレインはエフと違って人間とのハーフだから自分にも分からないところがあるって言ってた。たいていのことはサードブレインが教えてくれるんだって。なんか、自分の頭の中にもう一人誰かがいるみたいな話だね」
 夢実は他人事のように言って笑った。
「二人とも別人になってたらどうしよう。コブがめっちゃ伸びてたりして」
 絵里子がふざけて言った。
「明日の朝、グループラインしようよ、コブ見せてあげる」
 夢実が言うと、スッピンは嫌だと絵里子がゴネたが、かわいいから大丈夫だとおだてられ納得した。
 あとは相談と言っても大した話はなく、ユニコ会とは別に四人だけで会う日を決めたくらいだ。今日一日でかなり親しくなったが、それは特殊な経験を共有したからで、お互いのことはまだまだ未知数だ。陽介は密かに夢実と絵里子を天秤にかけて品定めをしているようで、円盤より二人の天秤の方が重要らしい。彼らはどこにでもいる高校生で、特に目立つことも無くファミレスの隅で雑談に興じている。知らない人が見れば、何事も無かったかのようにまたねと言って帰ったとしか見えない。だけど彼らの体験したことは、月面に人類初の足跡を残したアームストロング船長と比べても遙かに大きく、人類史上最大の出来事だろう。なんと言っても地球外の知的生物と会話したのだ。まだ微生物でさえ確認されていないのにである。おまけに近所のコンビニに買い物にでも行くような気軽さで未確認飛行物体にまで乗ったのだ。そして彼らはその重大さに気づいていないのだ。地球の科学レベルを遙かに凌駕した知的生物が地球に飛来していることが知れたら世界中がパニックになるだろう。悪魔の存在が知れたらどうなるかは想像すら出来ない。
 ただし、彼らの話がすべて信用された場合に限る。おそらく一笑に付され、いつもの日常が続いていくだろう。日常を維持するには真実から目を背けることが最重要と言うことだ。いつの日か真実を知って、いままで自分が信じてきたものが儚い幻想だったと知るのだろう。現代の未熟で偏った科学技術は真実を知るためではなく、真実から目を背けさせる働きをしているに違いない。科学的という迷信を信じているからだ。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。