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第2章11 [メロディー・ガルドーに誘われて]

 昼食後一休みすると紗羅は祐介の肩をポンと叩き、
「さぁ、裏山に登るわよ」
 と嬉しそうに言った。祐介は一眠りしたいと思ったが、嬉しそうな紗羅の顔を見て諦めた。
 祖父の家から裏山の入り口までは五十メートルほどで、裏口からよく見える。祐介は目印の大きな岩を探したがここからではよくわからない。細い道を行くと、伸びた雑草の間に腰くらいの高さの岩を見つけた。記憶ではもっと大きかったが、これが入り口の岩に間違いないだろう。あとは木を掴みながら上を目指せば頂上に着くはずだ。低い山だからそれ程時間はかからない。笹や木の枝が顔に触れたり足に絡みついて面倒だが、それらを踏みつけながら登るとようやく木々の隙間から空が見えてきた。もう少しだが、頂上の直前だけちょっとした崖のようになっていて、木の幹から幹へ抱きつくようにしながらやっと頂上へ着いた。もう少し広いと思っていたが、テニスコート位の広さしかなく、その周囲を木々が取り囲むようになっている。頭頂部だけ禿げた頭のようだ
「ここでUFOを見たの?」
 息を切らしながら沙羅が訊いた。
「そう……ここだ。昔とほとんど変わらない」
 祐介は周囲を見わたしながら言った。
「ここだけ木も雑草もないわね」
 紗羅はそう言うとポケットからなにか取り出して辺りを歩き始めた」
「何してるの?」
 祐介は沙羅の後から訊いた
「地磁気を調べてるの。UFOの現れた場所は地磁気が狂っていることが多いの。理由はわからないけど、UFOが磁力と関係があることは確かだと思うわ」
 紗羅は振り返り、手の中のコンパスを見せてくれた。コンパスの針は急に回り出したり、地面に吸い寄せられるように傾いたり、不自然で奇妙な動きをしている。
「有り得ないでしょう、ここの磁場はまるで嵐みたい。祐介さんも調べてくれる?」
 祐介は紗羅の手からコンパスを受け取ると、同じように辺りを歩きまわった。雑草や樹木の生えているところでは正常に北を指しているが、草木の生えていない石ころだらけのところへ行くと、コンパスが狂ったように動き出す。まるで見えない生き物が暴れているような気がする。
「あり得ない、こんなの見たら俺の脳細胞も狂いそうだ」
 祐介は何かを警戒するように辺りを見廻したが、何一つ変わったところは見当たらない。西に傾けかけた太陽が辺りの木々をセピア色に染め始めた。
 何百年、いや何千年も前からこの山は同じように西日に照らされ、木々は栄養を蓄え成長してきたはずだ。そう考えると山頂の石ころだらけの広場は不自然に思える。人間の手の入った形跡はないし、仮に何かの手が入ったとしても、これほど見事に地表がむき出しになったままになることはないはずだ。桜の咲く季節になれば待ちわびたように雑草が伸び始めるからだ。
「慎太郎君はこの裏山で行方不明になったんだよね」
 沙羅が訊いた。

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