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第3章5 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「それで、中はどんな感じだったの?」
「最初に目に飛び込んできたのはマンションの屋上でした。自分がいるはずの屋上を見下ろしていたんです。モニター画面とかそんな感じじゃなくて、向こうが透けて見えているように思いました。自分がどこにいて、どうなったのか、このときは混乱して慌てました。それで周りを見てようやく円盤の中かもって思いました。でも機械的な感じはまるでなくて、心地よい何もないところに立っていました。なんて言えばいいんでしょう、部屋と言うより空間という感じです。床とか天井とか壁面とかの区別がないんです」
 希良は天井を見上げるようにしながら話した。
「もう俺の理解の範疇はとうに超えてるね。いちおう訊くけど、異星人はいたの?」
 カズは疑うのを諦めたように訊いた。
「なんて言えばいいのか、何かの存在は感じるのに、目に見えないし、声も聞こえません。だけど色々伝わってくるんです。きっと会話もしていたはずなのに、何を話したか覚えていないんです。」
「聞けば聞くほど不思議だね、君を疑うわけじゃないけど、午睡の夢とか幻覚とかの可能性はどうなの?」
 カズはそう言うと腕組みをした。
「私もこれは何かのトリックか夢かと思いました。だけど私の深いところにある何かが、信じろってメッセージを送ってくるんです」
 希良はそう言うと困ったように微笑んで見せた。
「UFOを見たのは私も経験あるから間違いなく事実だと思う。幻覚でも夢でもないわ。そこから先の希良さんの話は本当に不思議だと思うけど、でも相手はUFOよ、頭の上で浮かんでいたのよ。何があっても不思議じゃないわ。なんだってあり得ると思う。地球人のちっぽけな常識なんて邪魔なだけよ。希良さんを百パーセント信じるわよ」
 紗羅が言った。
「それからどうなったの?」
 カズが訊いた。
「あっという間にマンションが見えなくなって、次に覚えているのは星に囲まれていたことかな。それが全方位だからその美しさはとても言葉なんかじゃ伝えきれないわ。自分は円盤の内部にいるはずなのに、感覚は体一つで宇宙空間に浮かんでいるような気がしたわ。静寂よ、完璧な静寂」

タグ:UFO
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