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第3章06 [宇宙人になっちまった]

「夢実さんは悪魔が見えたんだね。悪魔を追い払った声は特殊な周波数の振動波だと思う。僕には出せない種類だよ。多分だけどね、黒く見えるほど集まったってことは相当数の悪魔が量子レベルで集合していてさ、それを繋ぎ止めている鎖のようなネットワークをバラバラにしたんだろうね。ほとんどの物体は何かに共鳴するからね、量子レベルでも同じってことだよ。追い払えるなんて凄いよ」
 エフは目を丸くして言った。
「私は嫌だわ、悪魔なんて二度と見たくない。背中がゾクゾクして身体が凍り付きそうだった。こんなに見るなんてホントにどこにでもいるのね。ああ嫌だ」
 夢実はそう言って身震いした。
「ところでネックレスはチクチクしたの?」
 陽介が訊いた。
「そう言えばチクチクしなかったわ。夢実が気がついたからね。まるで意思があるみたい」
 絵里子はネックレスを手で握りながら言った。
「敬一君は見なかったの、悪魔の奴」
 夢実が心配そうに訊いた。
「何にも見えないし、感じないし。俺のサードブレインはポンコツかなぁ。これじゃあっという間に悪魔に乗っ取られそうだよ」
「そうだね、サードブレインは悪魔の大好物だからね、しばらく気を付けた方がいい。夢実さんと一緒にいると安全だし、刺激を受けて目覚めると思う。後もう少しかなぁ」
 エフはそう言って一緒にいるよう勧めた。
「それじゃ今日は円盤の中で過ごすの?」
 夢実は口を尖らせながら言った。
「円盤の中を案内するよ。見た目は小さいけどね、何でもあるんだ。僕はここでね、君たちの数だと二百年って言うのかなぁ。それくらい過ごしたよ。今まで何度もこの星はヤバくなったけど、今が一番ヤバいよね。悪魔の数が驚くほど増えてきたんだ。昔はこんなにいなかったんだけど」
 エフは独り言のように話しながら隣の部屋を見せてくれた。ドアのような出入り口は見当たらず、壁に吸い込まれるように中に入ることが出来た。だからどこに入り口があるか見た目では分からない。床はどこも柔らかく、どこでも横になって眠れそうだ。
「君たちだとここはキッチンって言うのかな。エネルギーを満タンにするんだ」
 エフに言われて室内を見廻したがキッチンらしきものは何も見当たらない。
「何を食べてるの?」
 絵里子が訊くと、
「食べるって言うのかなぁ、宇宙線を浴びるだけでいいんだ。しばらくここにいればそれでオーケー。君たちにみたいに味がどうのとかないからとても簡単。羨ましい? 君たちも早く進化すればいいのにね」

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