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第3章05 [宇宙人になっちまった]

「来たね」
 エフが言うと同時に目の前に夢実と絵里子が現れた。
「やっぱりここに来てたのね、でもここなら話が早いわ。エフに訊きたいこともたくさんあるしね」
 夢実はそう言って話し始めた。
「もう大変だったんだからね、朝から髪の毛の色も変わるし、でもそれはいいのよ、すぐに戻ったからね。大変だったのは学校へ行ってからよ、絵里子だって大変だったんだからね」
 そう言うと、絵里子が待ちかねたように話し出した。
「まだ一時限目が始まる前よ、夢実が屋上に悪魔がいるって私に言うの。私には女の子しか見えなかったけど、夢実の言うこと信じてその屋上に行ったのよ。かわいい子よ。でも顔からは想像できない、恐怖と絶望しか見えない目をしてたの。死のうとしている目よ。私まで引きずり込まれそうだった。もし夢実がいなかったら私も一緒に飛び降りてたかも知れない」
 絵里子はそこまで話すと肩で大きく息を吸い、夢実が話を続けた。
「見えたの、女の子と重なるように黒い影が。昨日ここで見せてくれた悪魔に似てたわ。その赤黒い塊が女の子の身体と重なってね、あの気味悪い触手が何本も身体に纏わり付いていた。顔は恐怖で歪み、恐怖で怯える目の奥に悪魔が見えたわ。目が合ったとき私の足はすくんで動けなくなったの。その次の瞬間よ、私の口から妙な声が出たの。何かの言葉だったかも知れないけど自分の意思じゃないわ。もう一人の自分がいるみたいだった。そしたらね、女の子の目から悪魔が消えたわ。ぽろぽろ涙を落としながら私に抱きついてしばらく泣いていた。話を聞いたらね、急に屋上から飛び降りそうになったんだって。やっちゃいけないって思うんだけど、身体は言うこと聞かなくてフェンスを乗り越えてしまってね、もう少しで飛び降りるところだったって」
 夢実は大きく息を吐いた。
「ここへ来る途中にも悪魔と重なるように歩いている人がいたんだって」
 夢実のかわりに絵里子が言った。夢実は悪魔の話をするだけでも疲れるらしい。
「二人見たけどね、屋上で見たような気味悪い触手は見えなかった。あれをオーラって言うのならね、真っ黒なオーラだった。思い出すだけでも嫌だわ」
 夢実はそれだけ言うと口を歪めた。

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