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こんなはずじゃなかった [小説について]

 小説「メロディー・ガルドーに誘われて」を続けていますが、まさかこんな展開になるとは夢にも思っていませんでした。こともあろうに異星人が、それも子供の姿で・・・当初は、ジャズ喫茶に集まる癖のある人間模様を描けたらと思ってスタートしたのですが、なんでかこんなことになって後に引けない状態です。まぁ、ドツボとでも言うのでしょうか?  


 本当に投げ出したくなりましたが、すでに2作も途中退場していますので、それだけは止めようと思い、これからどんな展開になるのか自分でも楽しみにしながら続けていこうかなと思っています。

 

 どうも私は、細かな人間観察を武器に人情の機微を描くというのは苦手なようです。それよりも、あり得ないような話を考える方が好きなようです。かといってSFまで飛んでいくこともできないのです。


 足場は日常の生活に置きながら、そこから異世界をのぞき、日常とリンクさせるのがどうも気に入っているようです。

 例によって、わけのわからない話になりそうなので、このくらいにしておきます。


 こんな、面白くもなんともないブログを懲りずに開いて下さる皆様に感謝しています。一人でも見て下さる方がいらっしゃるだけで、私はポジティブな気持ちを皆様から頂いています。本当にありがとうございます。


 こういうのは、独白というのか、愚痴というのか・・・・ただの独り言ですね

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第6章2 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「シミュレーションは刻一刻と変化し続けていて、ここ十年確実に悪化して、整合率九十パーセントを超えたのがトリガーになったんだ。国家のリーダーたちの動きがシミュレーションにどの程度影響するかはわからない。もし仮に核の連鎖が低下したり、整合率の低下があったら、判断に間違いがあると指摘して中止にすることが可能だね。だけど時間がないんだ。あと一週間がタイムリミットだね。それまでに判断の間違いを指摘しなければ自動的に全人類消滅プログラムが動き出すよ。根拠のない指摘は無視されるだけだね。僕もどうなるかわからないよ」
 太郎君は子供の顔なのに、老人のような表情を浮かべながら言った。
「とにかく総理大臣に太郎君を会わせられるかどうかだね、とにかく友達に連絡をして段取りを決めるよ」
 カズが言った。
 議員秘書の坂田明彦はこの店を開店してからの古い客で、最近は忙しくて余り顔を見せないが、以前は毎週必ず顔を出し、珍しい盤をリクエストしてカズを喜ばせた。年齢はカズより二十は若いが、ジャズの話で意気投合して自宅で飲み明かすこともあった。
 カズが電話で異星人との顛末を話し、とにかくUFOを実際に見てもらいたいと話すと、思った以上に興味を示して、その日の夜に坂田のマンション屋上で見ることになった。立ち会ったのは紗羅と祐介の二人で、夜遅くに帰宅した坂田はすぐに屋上まで上がった。首には双眼鏡とカメラをぶら下げている。
「カズさん、本当に来るんですね、もうそろそろですか?」
 と坂田は空を見上げながら言った。都心から三十分ほど西にある坂田のマンションはそれほど高くないが、周りには何棟かの高層マンションもあって、それほど夜空は広くない。動く発光体が幾つか見えるが、不審は動きはない。
「来るわ」
 紗羅が言うのと同時に頭上にUFOが静かに停止した。
「着陸するわ」
 紗羅がそう言いながら後ろに下がると、UFOは音もなく静かに屋上に停止した。坂田は声を出すことも忘れたかのように呆然と立っているが、紗羅たちは落ち着いて太郎君が出てくるのを待っている。
「やあ、待たせたね」
 予想通りの登場だが、坂田は両腕をだらりと下げたまま、端に座った太郎君を見つめている。

タグ:UFO
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第6章1 [メロディー・ガルドーに誘われて]


        第六章
 総理大臣に会う計画は円盤の中で相談することになり、全員が乗り込むとあっという間に地球がバレーボールほどの大きさになった。円盤の中から向こうが透けて見える感覚は、まさに宇宙空間に身体一つで浮かんでいるように感じる。一言も発することなく、美しい地球を堪能し、漆黒の空間の奥を眺めた。紗羅はこのままずっと浸っていたい気持ちを奮い起こして声を出した。
「それじゃ始めましょう。最初は総理大臣に会う方法からね」
 紗羅が言うと、カズが友達に議員秘書がいるから話を通すことは出来ると言ってくれた。ただ、緊急要件で異星人が面会を希望していると言われて信じてもらえるとは思えない。それどころか怪しまれて秘書が身辺調査をされるのがオチだ。そもそも秘書にさえ信じてもらえないだろう。秘書と友達とは言っても、カズは新宿のジャズ喫茶の親父で議員から見ればなんのメリットもない相手だ。信じてもらう方法はUFOを見せる以外にない。この段取りはカズが進めることになった。
 有力な国会議員に話が通れば、総理と異星人の会談を極秘裏に進めることが出来るはずだ。仮に総理と異星人が単独で会談と言う情報がマスコミに漏れたとしても、支持率は上がるはずだ。会談となれば当然あのシミュレーションを見ることになり、まずアメリカとホットラインで話し合うことになる。もちろん、うまくいけばの話で、シミュレーションをまやかしと言われればそれまでだ。うまくいったとしても、そこから先は国家のリーダーたちの行動次第と言うことになるだろう。紗羅たちはここまで話をまとめたが、まだまだ未知数のことも多く、こんな簡単に事が運ぶのか不安な気持ちの方が強い。
「筋書き通りに出来たとして、全人類消滅プログラムを中止にする可能性はどのくらいなの?」
 紗羅が訊いた。

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第5章11 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「そこまで準備が整っているのに、太郎君に本当に止められるの?」
 紗羅が訊いた。
「難しいけど、やるしかない」
 太郎君は小さな拳を握りしめている。
「どうやって?」
 祐介が訊いた。
「シミュレーションの結果を変える。基礎パラメーターの一つを変更するんだ。そうすれば結果に影響が出て、人類消滅の判断は間違っていたことになるよ。それで中止になると思う」
 太郎君が言った。
「基礎パラメーターを変更? 具体的にはどうするの?」
 祐介が訊くと、
「人間の善性の値とか攻撃性とかの値を君たちをモデルに再設定させてもらえば、シミュレーション結果は違ってくるはずだよ。この設定は僕の親友が担当だからなんとか出来ると思う。元のパラメータはあらゆる場面を想定して最悪値を設定しているからね」
 太郎君が言った。
「そんなにうまくいくかなぁ、俺たちをモデルにしたところでそれほど変わるとは思えないよ」
 祐介が言った。
「そんな面倒くさいことしなくてもさぁ、もっと簡単な方法があるわ。太郎君が総理大臣に会っちゃえばいいのよ」
 高校生の浦辺由香が大きな声で言うと、俯いていた皆が顔を上げた。
「なるほど、そうか、簡単じゃん」
 同級生の汐見健太郎が声を上げた。
「総理大臣にか、面白いじゃないか、俺は賛成だね。シミュレーションなんかくそ食らえだ。どうせ地球人のやることはモニターしているんだろう? 総理大臣が声をかけて世界のリーダーが仲良くなれば万々歳だね。円盤を見て最初はパニックになったとしても、状況を理解すれば、長年憎み合ってきた民族同士でも握手するさ」
 カズが嬉しそうに言った。
「そんなにうまくいくかしら。それがもとで、かえって仲が悪くなったりしたら最悪ね、主導権争いとかなんとか。太郎君の言うとおり、人間は争いが好きなのかも知れないわよ。でもね、パラメーターよりはいいと思う。賛成よ」
 紗羅が言った。太郎君は最後までパラメーター変更を主張したが、協力が得られないことがわかると渋々賛成した。最後に、失敗したらみんな滅びると言って脅かした。

タグ:UFO
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第5章10 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「よく見ていてね、整合率九十パーセント以上の精度の高いシミュレーションだよ。この映像を根拠に人類消滅が決定したんだ。」
 太郎君が静かに言うと、みんなは食い入るようにモニターを見つめている。
「あの、小さな黒い点は何?」
 紗羅が訊いた。よく見ると、幾つかの小さな黒い点が画面上に増えている。陸上や海上の区別無く点在しているようだ。
「あれは、君たちが手にした核物質のあるところだよ。ミサイルや発電所、実験装置、処理施設、艦艇、潜水艦、航空機、地球上のすべての核物質の場所を示しているよ」
 それらの小さな黒い点は、まるで地球を蝕む病原菌のように見え、北極海の氷の下にも幾つか見える。黒い点の増殖が終わると、次は所々の黒い点が赤く変化し、その数は次第に増えて半分を超えると急激に増えてほとんどが赤い点に変わってしまった。
「どうなってるんだ、どんどん色が変わっている」
 祐介が訊いた。
「赤くなるのは、核物質が異常な分裂を起こしているところだよ。ほとんどはミサイルの爆発だね。最初の一発ですべてのストッパーが外れてしまったんだ。連鎖は誰にも止められないんだ。」
 太郎君が言った。
「核戦争?」
 紗羅が訊いた。
「そう、君たち自身が一番恐れている核戦争だよ。恐れているくせにさ、本当の怖さをわかっている人は少数派だね。だから色々理屈をこねて最後のボタンを押す人間が現れてしまったんだ。誰もが過信していたんだ。最後の一線は越えないだろうってね。モニターを見て、核の雲だよ、地表が見えなくなったね。ほとんどの生命体はいなくなるね。こうなることは目に見えてるのにさ、本当に残念だよ」
 太郎君が言った。
「で、こうなる前に全人類を消滅させるということか。地球と人間以外は救われるし、宇宙空間への影響もないしね。シミュレーション見るとさ、それもいいかもって思えてきたよ。でもどうやって人類だけを消滅させるの、自分がどんな最後になるのか知りたいね。」
 カズが訊いた。
「古典的だけどウイルスに感染させるよ。時間はかかるけど確実なんだ。もう準備は完全に整ってる」
 太郎君は小さな声で言った。

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第5章9 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「私は太郎君と一緒に感じたあの感覚を信じるわ。UFOに乗せてもらったときに感じたあの感覚よ、完璧な静寂。宇宙との一体感よ、あのとき繋がったの、共通感覚ね。太郎君に嘘はないわ。話の内容がどんなだろうと、太郎君の言葉を信じる」
 希良の声は確信に満ちていて、心の中にある迷いが消えていく。みんなもあの感覚を思い出したように見える。
「俺にはその共通感覚っていうのはわからないし、太郎君のこともわからないけど、みんなを信じることにするよ。太郎君が協力して欲しいって言うなら一緒にやってやるよ」
 カズが言った。
「カズの態度はちょっと変よ。私たちは協力するんじゃなくて、自分たち人類が生き残れるかどうかって瀬戸際なんだから、お願いするのは私たちの方なのよ。すでに全人類消滅は決定事項だって聞いたでしょう。だからここにいる十一人と太郎君がすべてよ。私たちがどうするかで、人類が生き残るか消滅するか決まるの。無名の私たちが全人類の未来を決めるのよ」
 紗羅は力を込めていった。
「みんな、ありがとう。それじゃ僕から話すね」
 太郎君はそう言うと目の前の空間にモニターを映し出した。青い地球が漆黒の空間に浮かんでいるのが見える。
「僕はトンネルを使ってたくさんの星を見てきたけど、こんな美しい星は他にはないよ。一度見たら虜になっちゃう。僕は宇宙の宝島だと思っているんだ。この星で暮らす君たちは素晴らしくて、絵画や音楽は僕たちの星でもファンがたくさんいるんだ。芸術は宇宙との一体感を感じるのと同じなんだ。君たちがピカソに圧倒されるように僕たちも圧倒されるよ。モーツァルトを聴いて宇宙を感じるのは誰も同じだと思う。君たち人類はね、右手に芸術を持ち、左手に破滅の道具を持っているんだ。今はね、大きくなった左手を振り上げていつ振り下ろしてもおかしくない状態なんだ。誰かがちょっと背中を押すだけでいいんだ。だから振り下ろす前に消滅させることになったんだ」
 太郎君はそこまで話すと口を閉じ、モニターに映る地球を指さした。よく目にする美しい地球がそこにあり、ゆっくり回転しているから静止画ではない。

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第5章8 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「ちょっと待ってくれ、人類が宇宙のガン細胞で、全人類の消滅が決められた? 君が消滅のスイッチ係? さっき俺たちのことを仲間って言ったよね、それなのに仲間を消滅させるってこと? 人類を滅亡から救うのが目的って言ったよね、俺には君が何を言ってるのか理解できないし、信用できない」
 カズは語気を強めていった。
「そうよ、滅亡から救うって何なの、滅亡するって決まったの? そんなのあり得ない。そんなことを言うためにここまで来たってこと?」
 紗羅も太郎君を睨みながら言った。
「そうじゃないよ、まだ話は続きがあるんだ。確かに僕の星では人類の消滅を決めたけど、僕は消滅反対派なんだ。少数派だけどね。消滅賛成派だって、大半は出来ればそんなことしたくないんだ。だから敢えて反対派の僕に最後の確認役を任したんだ。もう一度言うよ、全人類の消滅は決められたんだ。僕の確認でその判断が間違いだってわかれば人類消滅を止めることが出来るんだ。僕を邪魔する異星人もいるし、強硬な消滅賛成派に妨害されることもあると思う。だから用心しないと僕だって危険になるかも知れない。それでも僕は人類を消滅させたくない。だから一緒にやって欲しいんだ」
 太郎君はそう言って頭を下げ、日本人のような振る舞いをして見せた。
「こんな恐ろしい話を太郎君のようなかわいい顔をした子どもから聞かされるとは夢にも思わなかったわ。私たちは消滅するってどこかの誰かに決められたのよ。こんな話をいきなり聞かされて信じられる? 私たちはそんな話を聞くためにUFOを呼んだんじゃないわ。もっと夢のある話をしたかったの。美しい宇宙の話を聞きたかったのよ。それなのにこんな恐ろしい話を聞かされるなんて、私は絶対信じないわ」 
 紗羅は太郎君を睨みつけている。
「太郎君の話を信じれば、太郎君は消滅反対派で、太郎君が消滅の判断は間違いだって言えば中止できるってことだよね」
 祐介が訊いた。
「そうだよ。でもどんな形でもいいから、間違いだったことを証明できないとだめなんだ。それほど簡単じゃないと思う」
「人類消滅の話を小さな裏山の上で聞くなんて思いもしなかったよ。俺たち以外の人間は夢にもそんなこととは知らずに暮らして、訳もわからず消滅させられるってことだ。みんなの考えを聞きたいね」
 カズが言った。


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第5章7 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「協力者? 仲間? それはどういう意味かなぁ、もしかして実験用モルモット? どんな実験か知らないけど、もしそうならお断りするよ。利用されるのはご免だからね。それに慎太郎君という子供がUFOに連れて行かれたと聞いたけどそれは本当なの?」
 カズは太郎君を睨みながら言った。
「祐介君と慎太郎君は一緒にいたね、僕と慎太郎君はそのとき一度しか会っていないよ。だからどうしてここにいないのか聞こうと思っていたんだ。僕はUFOには乗せていないよ」
 太郎君は眉を寄せるようにしていった。
「俺にはUFOに乗ったとしか思えないよ」
 祐介が言うと、
「だとしたら、僕じゃない。騙されたかもしれない」
「騙された? 誰に?」
「地球に来ているのは僕たちだけじゃないからね、他の異星人に騙されることもあると思うよ。意識というのは、この宇宙で暮らす異星人の共通アイテムなんだ。地球人はそのことがわかっていないからね。きっと慎太郎君はUFOを呼んで、それで僕じゃないUFOに誘拐されたのかも知れない。君たちの言うアブダクションの可能性があるね」
 太郎君は冷静に話した。
「ひとまず君の言うことを信用するとして、何の目的で地球に来たか教えてくれないか。俺たちを仲間にして何をしようとしているんだ」
 カズが訊いた。
「人類を滅亡から救う。これが目的だよ」
「滅亡? 人類が? なんで? 他の天体と衝突でもするのか」
 カズが言った。
「それなら君たちの科学でもわかるよ。そんな簡単なことじゃない。人類はこの宇宙空間で生きる価値はないと判断されたんだよ。宇宙のガン細胞だね。これ以上放置したら他の天体にまで影響が出るからね。だからそうなる前に全人類の消滅が決められたんだ。僕の役目はその判断に間違いが無いことを確認することなんだ。これはかなり形式的な手続きで、今まで間違いだってことは無かった。つまり僕が確認しオーケーすれば、すべての手続きを終えて実行となる。僕は全人類消滅のスイッチを押す係なんだ」
 太郎君は一人一人の顔を見ながら言った。

タグ:UFO
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第5章6 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「もちろんだよ。だけどその前に色々話しておきたいことがあるんだ。だって君たちは地球のことしか知らないからね、宇宙は広いんだよ。僕たちもトンネルを発見するまでは君たちと同じように自分たちしかいないと思っていたんだ。でも大間違いだったよ。宇宙には信じられないほどの生命体がいてね、僕たちみたいにトンネルを使える生命体もたくさんいるんだ。トンネルを使えるほど科学力が発達してもね、残念だけど生命体そのものはそれほど変わらないというか、やっぱり争いはなくならないんだよね。その中でもこの地球ほど争っている星は他にないよね。珍しいほど争いが絶えなくて、もうどうしちゃったのって思うよ。多分ね、争いが好きなんだろうと思う。命を奪うことが本当に好きなんだね。君たちには申し訳ないけど、この地球を実験モデルにさせてもらったんだ。ずっと昔から争いを克服する実験を繰り返してきたけど、全部失敗だったよ。どうやっても争いはなくならなかったんだ」
 ここまで話すと太郎君はみんなを見て、何か訊きたいことはないかと言ってくれた。皆は顔を見合わすだけですぐには言葉が出なかったが、ようやくカズが口を開いた。
「もう驚きしかないよ。こんなスゴい話を何の影響力もない俺たちだけで聞いていいのかって思うよ。世界中のマスコミと各国の指導者を集めて同時放送するべきだと思うけど、でもそんなことしたらパニックになるよね。聞きたいことは山ほどあるけどね、例えばトンネルのこととか、そのトンネルを使って太郎君以外の星からも来ているのかとか、今までの失敗のこととか」
 カズは身を乗り出すようにして訊いた。
「トンネルのことは君たちも理論上は理解しているはずだよ、ただ実現するのは相当時間がかかるよ。可能だから諦めないことだね。トンネルを使うと本当の宇宙の姿が見えてくるよ。それから地球に来ているのは僕たちだけじゃないことは確かだよ。それ以上はわからないね。それから失敗のことはね、歴史を調べればある程度はわかると思うよ。役に立つ技術や科学知識を教えたけど、争いはなくならなかったね。むしろ悪化したよ」
 太郎君は静かに話してくれた。
「なんで私たちなの? これも実験なの?」
 紗羅が訊いた。
「最初はたまたま君たちを見つけたんだけどね、でも誰でも良かったわけじゃないよ。一番のポイントは僕との親和性が決め手だったよ。僕はこの星に協力者が欲しかったんだ。ここにいるみんなのことを僕は仲間と思っているよ。もちろんカズさんもみち代さんもね」
 太郎君が言った。

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第5章5 [メロディー・ガルドーに誘われて]


 異星人から太郎君になると、円盤の端に腰掛けていることすら当たり前の光景になって、色々な質問が太郎君に浴びせられた。特に熱心に質問していたのはカズで、まるで私立探偵の身辺調査のようだった。どこから来たのかという質問には、大体二百万光年離れたところと答えた。家族はいるのかとか、何を食べてるのとか、学校はあるのかとか、どうやって生活しているのとか、大半は暮らしぶりについての質問ばかりだった。太郎君の本当の姿がは虫類でなければ、見た目からして似たような遺伝子を持っているかも知れない。祐介がそのことについて訊くと、太郎君と地球人の遺伝子は九十九パーセントは一致すると言った。本当の姿はもう少し違うようで、全身を包む皮膚は服を着替えるように、地球上で過ごしやすく親しみやすい見た目にしていると教えてくれた。宇宙線の影響が強いらしい。驚いたのは地球人の遺伝子のルーツは地球外由来だと言ったことだ。自分たちの遺伝子は地球人の専売特許ではなかったのだ。太郎君と地球人は兄弟のようなもので、ルーツは同じ遺伝子らしい。進化上は太郎君の方が先を進んでいるようだ。質問が落ち着くと、みち代が待ちかねたように話しかけた。
「あの、私からプレゼントがあるんだけど、受け取ってもらえるかしら」
 そう言ってバッグから小さな箱を取り出し太郎君の前に差し出した。太郎君はありがとうと返事をすると、箱の蓋をそっと開け小さな手を中に入れた。中から取り出されたのは、和紙で折られた小さな折り鶴だった。
「これは?」
 太郎君は目の前で色々な角度から見ている。
「折り鶴よ、美しいでしょう、一枚の紙から出来ているのよ」
「これで何をするの?」
「何もしないわ、どこかに飾って眺めるの。それだけよ。」
 みち代は優しい声で言った。
「飾るって意味がよくわからないけど、でもみち代さんの声と同じで優しい感じがするね」
 そう言うと鶴を円盤の上に置いた。
「折り鶴って確かに海外では評価されてるけど、太郎君は地球外だよ、わかるかなぁ」
 カズが折り鶴を見ながら言った。
「太郎君には地球に来た目的があるんでしょう?」
 紗羅が訊いた。

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