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第2章 その(24) [小説 < ツリー >]

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                         第2章 その(24)

 念を押すように訊いた。
「ええ、杉の真下でした」
「あの杉の木は、ここらのご神木として昔から大事にされてきて、あの近くには邪な奴は近寄れないはず。なのに、美緒の中に入ってきたと言うことは……神様か?」
 婆さんは自分の答えに戸惑っているように見える。

「私に神様が?」
 美緒も首を傾げている。
「それはあり得ることだよ、美緒は霊媒体質で入りやすい。おまけにあの場所は昔からお祓いをする場所として使われていたからね。俺の親父が問題を抱えた人のお祓いをする場所はいつもあの場所だったし、あの場所でお祓いをすると、親父はまるで別人のように見えた。きっと神様か何かが乗り移っていたのかも知れないと思う」
 片岡さんは昔を思い出すように言った。

「ちょっと待ってよ、私に神様が乗り移るってこと、神様って何?」
 美緒は、神様と言われて納得できないように言った。

「おきぬさんに言わせるとこの神社の神様だね、美緒に乗り移ったのは。もう少しわかりやすく言うとだなぁ、善良な霊的存在とでも言えば納得できるかい」

「善良な霊的存在?……よくわからないけど……今でも思い出すと気味悪いわ」
「じゃぁ、<かわれ>って言う意味は?」
 俺が一番気になっていたことを訊くと、皆の話を聞いていた婆さんが話した。

「私は三坂の黒松を思い出したけど、でもご神木のところだからねぇ………」
 そのあとは、誰も話さず考え込んでいる。しばらくすると片岡さんが、

「今の祐介君は大丈夫だろう、おきぬさんはどう思う」
「私は腑に落ちないね、あの嫌な感じと臭いがさっぱり綺麗になくなったことがね、昨日感じた臭いはただモノじゃなかったよ。とにかく気をつけた方がいい」

 話はそこで終わったが違和感を感じる。お祓いをすれば全て解決するような話しぶりだったし、俺も内心そう思っていた。自分では自覚がないが、俺の中に何かが入り込んでいたという。そしてそれはいとも簡単に出て行ったという。俺の中にある事実は、昨日の夜に聞いた<かわれ>だけなのだ。あの時の美緒の声が耳にこびりついて離れない。


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