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第6章 その(12) [小説 < ツリー >]

古代秘教の本―太古神話に隠された謎の秘儀と宗教 (New sight mook―Books esoterica)

 古代秘教の本―太古神話に隠された謎の秘儀と宗教 (New sight mook―Books esoterica) (単行本(ソフトカバー))

 

 

 

                                   第6章 その(12)

 何とか逃げ出したいが、加代子の身体から迂闊に出てしまうと怪しげな霊体に何をされるかわからないし、加代子から離れるわけにもいかない。信者を取り囲むように何人かの霊体が漂っている。儀式の始まりを待っているように見える。

 初老の男が皆の食べ終わったことを確かめると、また立ち上がり、
「それではそろそろ修養の膳を終わらせていただきます。二時間後の零時に二根交合の秘技を始めますので、それぞれご用意をお願いいたします」
 と述べると、信者はそれぞれ役割が決まっているのか、幾分緊張した面持ちで立ち上がり、無言のまま食卓を片付け広間の設営を始めた。

 加代子は奥の部屋に連れて行かれ、初老の男から段取りを聞かされた。源三郎は裏にある離れに行ったようだ。どうやら零時から夜明けまで眠ることもトイレに行くことも出来ないようだ。
 
 加代子は今日の疲れと胃袋が満たされたことで眠くなってきたようだ。その場に横になるとすぐに寝息を立て始めた。俺には身体の疲れは関係なく、加代子が眠っていようと意識はしっかり働いているし、周りの様子もある程度はわかる。隣の広間からは話し声一つ聞こえて来ないが、何人かの信者が立ち働いているのがわかり、加代子の嗅覚を通して妖しげな香りが漂ってきたのがわかった。この香りは先ほどの真言と同じように、意識の何かを麻痺させてしまうような気がする。

 足音がする。どうやら源三郎が離れから戻ったようだ。加代子の横に静かに座り何か物音がする。隣から漂って来る香りとは違い、それよりも強い香りを感じる。しばらくすると今度は別の香りを感じ、身体が痺れてくるような気がする。加代子は心も体も痺れたようになり、これでは目覚めても朦朧として何の判断力も働かなくなってしまうだろう。

「十分前になったら連れてくるように」
 源三郎はそう言うと広間に行った。広間からまた真言を唱える声が聞こえ始めた。最初は少なかったが、時間が経つほどに人数が増え勢いを増してくる。その声は眠る加代子を刺激し身体の中で変化が起き始めた。声に会わせて身体を震わせたり呻いたり、時には痙攣のように身体が動くこともある。俺は加代子の中でただその変化を感じることしか出来ない。呼びかけても声は届かないのだ。

 広間が静かになった。
「起きなさい」
 初老の男が言うと、加代子は抱きかかえられるように身体を起こした。
フラフラと立ち上がった加代子は、男に連れられ広間に入った。広間の中央に真っ白な布団が敷かれ、その枕元には先ほどのどくろが箱から出して置いてある。そしてその周りを信者が取り囲んでいる。

 

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