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計画(1) [小説<物体>]

                 計画(1)

「拠点です。拠点にいるツリーチルドレンの力です。何か方法があるはずです」
 工藤さんは腕組みをして暫く考えていたが、
「分かった。未知数だが可能性はある。私も一緒にやろう。研究は彼らに任せておけばいい」
 そう言うと、お茶を一気に飲み干した。
「まず、何から始めるつもりだね」
 工藤さんが訊いた。
「この近くにいる、出来るだけ沢山のツリーチルドレンを集めたいんです。それが危険なことは承知していますが、彼らの未知の力に賭けるしかないと思います」
「いいだろう、拠点への連絡は謙太君がやってくれ。私は市ヶ谷の基地に連絡をして、各拠点まで迎えの車を出せるか確認しよう。実行は明朝でいいかね?」 
「ええ、何が出来るかは集まってからの相談です」
 工藤さんは俺の返事を聞くとすぐに立ち上がり、通信機器に向かって行った。工藤さんも、もう研究ばかりしている段階ではないと思っているのだろう。どんな原始的な方法であろうと、理屈に合わない方法であろうと構わない。思いつく限りのことをやってみるしかない。

 基地との連絡が取れ、ツリーチルドレンの移動手段は確保できた。数台の車両が動いてくれる。また研究所の食料が足りないだろうと、基地の食料も一緒に運んでくれることになった。拠点は七カ所と連絡が取れ、ツリーチルドレンの人数はマー君たちを含め総勢で十三人となった。それに家族の人数を合わせると相当な数になる。集まったところで何が出来るか分からないが、何かが見つかることを期待するしかない。
 工藤さんは、連絡を終えると研究員に明日の動きを伝え、自分はさっさと居室に戻った。俺もこれ以上やることはない。全ては明日全員揃ってからだが、その前にマー君に話を聞いておきたい。俺も工藤さんと同じようにさっさと居室に戻った。
 
 居室では就寝の用意をしているところで、マー君はまだ起きていた。明日のことを知らせると目を輝かせて喜び、
「早く逢いたい」
 と、まるで遠足にでも行くようにはしゃぎ始めた。
「明日やって来る友だちと何がしたいの?」
 俺が訊くと、
「一緒にいるだけでいいんだ。僕たちは一緒にいるだけでいつの間にか力が膨らんでいるんだ」
 マー君はそう言って笑った。
「ママもパパもだよ。一緒にいるとね、力が膨らんでいるよ」
 マー君はそう言って、俺たちを見比べるように見た。マー君の言う通りなのかも知れないがよく分からない。
「一つ訊いてもいい、オロチの友だちのことなんだけど」
 はしゃいでいたマー君の顔から笑顔が消えた。
「どんなこと?」

 

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