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ブレインハッカー 第5章 アポトーシス(1) [小説 < ブレインハッカー >]

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     第5章 アポトーシス(1)

 九旗昭彦と村木潤三は、次の日浅草までその男を捜しに行き。三日間あちこちで寝泊まりしながら探し回った。若い奴を見たことがあるという話しは聞いたが何処にいるかは誰も知らなかった。繁華街から少し離れたところに目立たない小さな公園があり、数人の年老いた浮浪者がたむろしていた。どの浮浪者も何枚も重ね着をして体を動かすのも大儀そうにしている。昭彦達も彼らと似たり寄ったりの格好で近づくと、
「おやっさん、今日は暖かくてまぁいいね、浅草はどうだい、今日新宿から来てみたけど食えるかい」
 と聞いた。七十代には見えるその男は、透き通るような青空を見上げながら
「善いも悪いもねえよ、わしらはずっとここだからなぁ。今日も生きてるからまあ食えねってことはねぇよ。酒あるかい」
 と人なつっこい笑顔で言った。村木はポケットからワンカップを出すと老人に握らせた。「あんたいい人だねえ、酒は命とおんなじだ。それをわしに飲ませてくれんのかい」
 と言いながらもう手はカップの蓋を開けかけていた。それを見ていた何人かの仲間が数人集まってきた。

「ここらじゃ見かけない顔だなぁ」
 とその中の一人が言うと、村木は、
「こいつより二つ三つ年かさの男を知らないかなぁ」
 と昭彦を指さして言った。ワンカップを飲みかけた男が、
「あんたぐらいの男なら、見かけないことはないけどどっちの男かね、気味の悪い方か、色白の方か」
 と聞いた。色白と聞いて兄の達夫に違いないと思った。昭彦は、
「色白の方です」
 と反射的に応えた。
「色白で良かったねぇ、気味の悪い奴のことなんか話したくもなかったよ。あの色白なら毎朝川っ淵に立ってるよ。この寒いのに何してんのかってみんなが不思議がってるね。何を見てるんだねって話しかけると、好きなんです。川の側で育ちましたからって、あいつは根っからの善人だね。儂らみたいな半端もんと違うね。あんたは知り合いかい」
 と優しそうな目をして聞いた。昭彦は、
「ええまぁ」と応え、
「いまどこにいるか分かりますか」
 と訊くと、
「わかんねえなぁ」
 と、すまなそうに笑った。その笑顔が人懐っこく妙に心地よかった。

 駅のシャッターの前で夜を明かした二人は始発電車の出る前に駅を出た。まだ暗く人通りは殆ど無い。時折トラックが信号をもの凄いスピードで通過して行く。兄は今日も川辺に立っているだろうか。

 兄と最後に会ったのは去年の2月、今日のように寒い朝だった。突然やってきた兄に起こされたのだ。転がるように部屋の中に入ると、
「逃げてきた」
 とだけ言うとそのまま横になり死んだように二時間ほど眠り込んだ。事情を聞こうとしても、
「すまん、寝かしてくれ」
 と言うのが精一杯の兄を起こすことは出来なかった。目覚めた兄の話すことは、誰が聞いてもとても信じられるようなことでは無かった。兄は気が変になったのだと思い、何とか落ち着かせようとしたが、かえって、
「落ち着いて聞け」
 と昭彦がたしなめられる始末だった。

 兄が研究に協力していてことは知っていたが、米軍基地内の施設へ行き始めてからは連絡が途絶えて状況は分からなかった。
「奴らの研究は人の脳を操る研究で完成目前の段階まで来ている。俺はジュリアという研究員のおかげで逃げ出すことが出来たが、奴らはこの日本で出来ないことは何にも無い。奴らが欲しいと言えば人の命だって手に入れることが出来る。ベトナム戦争の行方不明者が何人も実験で殺された。俺も捕まれば利用されるか殺されるかだ。此処も危ない。たぶん俺の行きそうなところは手が廻るだろう。ひとまず京都へ帰ってみるが、もう一度東京に戻って決着をつける。浅草で浮浪者を探してくれ。お前も此処を出て様子を見た方がいい」
 そう言い残すと慌てるように部屋を出ていった。

 

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