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トランス(7) [小説 < ブレインハッカー >]

クロスロード クロスロード
再販を希望しておりましたがようやく「やっと」出ました。期間限定でなく継続して販売をしていただきたいものです。クリームの2枚組アルバム「ホィールズ・オブ・ファイア」にライブとして録音されていた「クロスロード」から、ローバート・ジョンソンを知る。さらに過去に「ローバート・ジョンソン」なる天才が30曲足らずの作品を残していることを知り、目の前にあるものは買い求めるが結果的にコンプリートCDで決着。このコンプリートのはずの作品群の他にもう1曲未発表の曲があるというミステリアスなストーリーもマニアにはたまらないイントロです。イントロといえばローバート・ジョンソンがレコーディングする風景を初め見たときは思わず叫んでしまいました。クラプトンが本当に録音した場所で自分も演奏しているDVDがありますので、好きな人は見比べてください。音に関しては、ライ・クーダーとスティーヴ・ヴァイという2人の鬼才の登用でだれることがありません。スティーヴ・ヴァイはご本人も登場されてます。こうしてみると「若い」です。初めて見た時はほんまにビックリした思い出があります。他にも「朝日の当たる家」のモデルハウスみたいのが出てきたり見所満載です。 (レビューより)
                                  
                        トランス(7)
<由美、俺だ! こっちを見ろ>
 と呼びかけたが、由美は気がつかない。それどころか、ますます掴んだ指先が身体の中に食い込んでいく。
「やっぱり来たね、お前は覚えてるよ。悪いけどこの女はもう戻れないよ、こんなことをした罰さ」
<どうする気だ、離せ!>
「離せ?ホッホッ………離してあげるわよ、望み通りにね。そのかわり宇宙の果てまで拾いに行くのよ」
 そう言うと由美を掴んでいた無数の手が消え、由美は伸也に気がついた。
<伸也さん助けて!………怖い!………どこかへ行っちゃうよ……離さないで!>
<由美!…………戻れ、行くんじゃない………………由美!>
 伸也は懸命に呼び戻そうとしたが、次第に由美の意識は感じられなくなってきた。そして伸也の意識の中から消えてしまった。
<由美に何をしたんだ!早く助けろ>
 と詰め寄ったが、翔子は薄笑いを浮かべ楽しんでいるように見える。
伸也が憎悪の念を露にすると、翔子の顔から笑みが消え、
「二人仲良く宇宙の迷子にしてあげるわ」
 と、伸也の意識に絡みついてきた。
 伸也は凄まじい冷気のようなものを感じたときにはもうどうすることも出来ず、ただ翔子を睨みつけることしか出来なかった。
「あの女よりは力があるみたいね、でも無理よ、あきらめなさいね」
 と薄笑いを浮かべた
 次第に意識が薄れ、翔子の顔がぼんやりしてくる。身体に戻れないことが直感的に分かった。身体と意識を繋ぐ細い糸のようなものが切られてしまったのだ……………
 伸也は暗い空間を漂っている自分に気がついた。翔子の言ったことは本当だったのだ。地球も月も見えない。ただ無数の星が伸也の周りにある。恐ろしさも寂しさも苦痛も感じない。感情さえ無い世界なのだろうか。憎悪も愛情も薄れてしまい記憶だけがしっかり残っている。由美も同じようにこの暗い空間を漂っているのだろうか。そしてそれはいつまで続くのだろうか。生きているのか死んでいるのかさえも分からない世界。永遠と一瞬が同じ世界。そして自分は一体どういう存在なのだろうか。伸也は自分の中に二つの想いがあることを知った。
 このままの状態を望む意識と、もう一度肉体に戻ろうと言う意識である。その二つの想いが最後に残された感情なのかもしれない。
<伸也さん………伸也さん………>
 どこかで自分を呼ぶ声が聞こえる。伸也は周りを見回すと遠くのほうにぽおっと浮かぶ白い光を見つけた。その光りに懐かしいような安心感を覚えるとどんどん近づいていってしまう。
 近くに行くとそれが光に包まれた由美であることが分かった。そして自分も由美と同じ色の色に包まれていることが分かり、やがてその色は重なり合い二人は一つの光りに包まれた。
<ずっとこうやって来たんだ。この前もその前も………そうやって何度も肉体に戻っていったんだ>
 肉体で何度辛い別れを味わっても、ここで二人は求め合いそして出合ってまた戻っていく。辛い別れを味わう理由は分からないがきっと何か訳があると思った。
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