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第二章(二) [小説<十九歳の呪い>]

                 第二章(二)

「どうすれば守ることが出来るのですか? 相手は目に見えないし、どんな方法で殺そうとするのかもわからないし、そんな相手を防ぐなんて、暗闇で棒を振り回しているようなものじゃないですか」
 俺は大本さんに率直に言った。
「私も祈祷師の端くれですから、できる限りのことはやります」
「大本さん、ほんまによろしゅうお願いします。この子を助けて下さい」
 お袋は畳みに頭を擦りつけるようにして言った。
「俺は何をすればいいんですか」
「健二さんは気持ちをしっかり持っていることが大切になります。それさえ守っていただければきっと大丈夫です」
 祈祷師はそう言って、俺を安心させようとしてくれた。俺もそう思いたいが、それなら今まで例外なく十九歳で亡くなったのはなんだったんだろうと思う。確実に九人の先祖は殺され、親父だって不可解な死に方だった。気持ちの持ちようで解決できるようなことではないように思える。実家で感じた恐怖を思い出した。目には何も見えなかったが、得体の知れない存在が迫っていた。もしもあの場所に一人取り残されたらどうなっていたかわからないと思う。
「二十歳の誕生日まで後三日ですから、それまで何とか頑張りましょう」
祈祷師が言った。
「大本さん、その三日間なんです。お寺の過去帳を見たら、九人とも二十歳になる直前が命日やったんです。あともう少しで二十歳やというのに………それで恐ろしゅうなって大本さんのところに駆け込みました。これからなんです」
 お袋は大本さんにすがるように言った。
「私は一度自宅に戻って必要なものを揃えます。それまでここで待っていてください。念のため夜になったら外には出ないように。それから入浴も止めて、一人にならないようにしてください。私は明日の朝には戻りますから、何かあったらすぐに電話をしてください。いいですね。それから、盛り塩とお札を貼っておきますからこれには触れないようにしてください」
 祈祷師はそう言うと、家の玄関、裏口、それに各部屋の四隅に盛り塩をしてお札を数枚貼り、急いで帰っていった。

「姉ちゃんごめんな、厄介なことに巻き込んでしもたなぁ」
 お袋が心細そうな声で言った。
「かまへん、健二を守るためや。みんなでここにおったら怖いことない。おなか減ったやろ、早うに晩御飯食べて、早う寝たらええ」
 雅代伯母さんは元気な声で言うと台所へ行き、後からお袋も手伝いに行った。
「お兄ちゃん、ここは本当に大丈夫? 塩と紙切れだけで守れるんか? なんか嫌な感じがする」


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