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第6章24 [宇宙人になっちまった]

「ここなら食べ物があるはずだよ。僕はいらないけどね、人間ってホントに不便だね。一日に何度も食べなきゃいけないしね。もっと簡単にすればいいのに、わざわざ時間かけて食べるなんて意味がわからないよ」
 エフはそれだけ言うと別の部屋に行った。降り方は簡単で、壁に向かって歩けば手品のように通り抜けられる。一瞬で円盤の外に立っている。あとは自分で歩くだけだ。様子を知っている敬一たちのグループが食料と医薬品のありそうな場所を調べて回った。二階は気になるが、今はその余裕がない。ほかの人には二階に行かないように注意した。食料と医薬品は地下室から見つかり、傷の手当てと食事の用意を分担した。誰もほとんど口を開かず淡々とやるべきことをこなしている。
 ようやく傷の手当てや食事の準備ができた。これだけの人数がいるのに誰もほとんど口を利かず静かな食事が進み、食事を終えた人は膝を抱えて眠そうにしている。安全な場所を得て、疲れがどっと出てきたのだろう。今夜安全に休める場所が今はありがたいが、明日のことは誰にもわからない。
「眠る前にこれからのことを相談しておこう。今の状態はどこにも活路が見い出せない、八方ふさがりだ。僕の頭では何も思いつかない。サードブレインの君たちがどう感じているか教えてもらいたいんだ。」
 ドクターが眠い目を擦りながら言った。
「状況はドクターの話されたとおりだと思います。僕のサードブレインは信じろと言ってますが、でも具体的には何もないようです」
 浜辺が申し訳なさそうに言った。
「あの、僕のサードブレインも信じろと言ってます。でも何を信じるのかよくわからないんです」 
 敬一だ。困ったような表情をしている。
「私もよ、信じろって」
 夢実が言うと、今まで黙っていた人も、同じだと声を出した。
「君たちは時々、サードブレインがどう思っているとか言うけど、それは君たちの中にサードブレインという別人格がいるってことなのかい」
 ドクターが不思議そうに訊くと、ユニコ会のメンバー同士で顔を見合わせた。少し意外な質問だったようだ。
「いえ、別人格とかそんな感じじゃなくて、サードブレインは優秀なアンテナとでも言えばいいのかなぁ」
 浜辺がもどかしそうに言った。頭では明瞭に理解できているのに、正確に表現できる語彙が見当たらないのだ。
「天才のアンテナよ! サードブレインはね、宇宙の中心と繋がっているの。ピカソもモーツァルトもみんなそうなのよ。アインシュタインだってきっとそうだわ。小さなサードブレイン持ってたのよ」
 夢実が目を輝かせていった。まるで何か大発見をしたようだ。
「天才のアンテナ?」
 ドクターは困ったように訊いた。
「そうよ、私たちのはもっと凄いの、大天才のアンテナね!」 
 夢実は得意げだ。

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