SSブログ

大江山(3) [小説 < ブレインハッカー >]

         ここに目を通して下さり、ありがとうございます。 長いから読むのたいへんだし。

でも、これ書くの、読む時間の何倍費やしたのか・・・・気が遠くなる。雑文で申し訳ないです。
では続きを・・・・


                             大江山伝説(3)

   「話は第二次大戦になりますが、当時の軍部が偶然にも酒呑童子の家系に伝わる古文書を発見したことから始まりました。その古文書には童子の家系の者は代々伝わる修練をして、様々な特殊能力を持つことが記されていたそうです。

 更に天皇を真っ向から否定し盗賊の首領と断罪する過激な内容だったと聞きます。当時の軍部が放って置く筈もなく、何人かの家系の者が捕らえられ厳しく追及されました。大江の者はその古文書はインチキで自分たちには全く関係ないと言って難を逃れたのですが、亀岡の若い男だけはそのような言い逃れを潔しとせず、代々伝わる古文書に偽りはないと言い切ったそうです。

 それが発端となってその特殊な力を軍が知り利用されました。どの様な形で利用されたのかは分かりませんし、その男や家族の消息も全く分かりません。兄が言うには、戦後それらの資料が米軍の手に渡り、今頃になって米軍で研究され始めたようだと言っていました。
 
 とにかくその頃福知山の自衛隊駐屯地から士官が来て研究に協力して欲しいと依頼がありました。兄はすでに特殊な力が備わりつつあり、一部の人たちの間で病気の治療やまた、様々な相談などにも乗っていました。そんなことも調べた結果だとは思いますが一族の中から兄に依頼が来ました。大学への進学と奨学金、研究が終了するまでの間の謝礼。兄にとっては飛びつきたくなる条件でしたし、不審な点は無かったように思います。ただ子どもの頃から仕込まれた代々伝わる修練も研究対象にするということで、父は強く反対していましたが、結局押し切って横浜の大学に入学しました。

 しばらくの間はどこの実験室にもあるような装置を使った退屈な実験が続いたようでしたが、と言っても研究者にとっては兄の出すデータや結果は目を見張るものばかりだったようです。しかし連中が本当に研究したいことはそんなことではありませんでした。代々伝わる修練は、命に及ぶような攻撃に遭遇したとき、それを回避する為のいわば護身術なんです。その方法の一つとして、相手の精神とか脳に侵入して思考や行動を意のままにコントロールすることなんです。

 資料からそのことを知っている彼らはその力を研究したかったのです。一通りの研究データが揃うとそれまでと違って米軍基地内の研究室に場所が変わり、内容も厳しいものになりました。

 肉体的にも精神的にも追い詰められたような状態での軟禁状態が続き、外部との連絡や接触はいっさい許されませんでした。接触できるのは研究スタッフと、兄と同じ様な被験者でした。兄は連中に、協力すれば此処から出られるし、協力しなければ君を消すこともできる。軍と警察は自由に動かせると言われたそうです。実験には常に屈強な男達が立ち会い何をする隙もなかったのですが、その状況を切り抜けられたのは兄の特殊な力でした。

 連中もそこの処についてはまだ過小評価していたようで、そのおかげで脱出出来たのだと思います。兄に特殊な力があるといってもスーパーマンじゃないですから。それでとにかく当時学生で都内に住んでいた次男に一部始終を話してすぐこちらに帰ってきたのですが、その途中で行方不明になりました。

 私たちが知っているのは数人の男に暴行を受け、そのまま連れ去られたところまでなんです。だだ連中が私たちの監視を執拗に続けているのは兄が生きているか、次男が何か秘密を握っているか、もしかしたらその両方かも知れませんが………。電話は確実に盗聴されています。次男の昭彦は先生の名前も言いませんでしたし、ただ鬼の話を聞きたい人が行くので頼むとだけ言いました。先生には申し訳ないのですが連中の出方を見たかったのかも知れません。何もなければそのまま帰っていただいたのですが結果はご存知の様に予想以上でした。

 こんなに動きが早いとは何か余程のことがある筈なんです。旅館にも手を打っておいたので先生のことはまだ連中は何も知らないはずですから、このまま尾行されずに東京に戻れれば、普段の生活をしても大丈夫だと思います。私たちは一緒に東京まで行って昭彦の居所を教えてもらえればそれで結構です。それから家での会話は盗聴されている可能性もあるので、兄は殺されたことにしたのです。色々辻褄の合わない変な話やら、嘘を言ったりして申し訳ありませんでした。どうか許してください」

 話し終えると静恵は、
「私たちでさえ信じられないようなことですが、でも事実はそれ以上かも知れません」
 とつけ加えた。
潮見はしばらく腕組みをしていたが、
「警察は当てにならないんですか」
 と聞くと静恵は、
「ええ、一番信用できません」
 と答えた。
「追ってくる連中は何をそんなに恐れているんですか、社会的には何の発言力も力もない若者をどうして恐れる必要があるんですか」
「連中は兄が証拠を持ってマスコミの前で話すことを恐れているのだろうとおもいます。だから両方を消してしまいたいのです」
「何の証拠ですか」
 と潮見が尋ねると、
「兄は、ベトナム戦争の行方不明者が研究所に居たと言っていました。きっとそのことかも知れません」

「ベトナム戦争ですか?ずいぶん昔のことですね」
「ええ、どこでどうなったのかは知りませんが、もうかなりの年齢のはずです。連中は人の人生や命を自分たちの玩具のように自由にすることが出来るんです。」
潮見は深く息を吐き出すと、
「こんな話を信用しろというのは無理なことに思えますが、貴方が嘘つきには見えないから困りました。でも一応ここでは信じることにしておきます」

 そう言うと潮見は表情を和らげた。
静恵も表情を和らげ若い娘らしい笑顔を見せた。
「日本は平和な国だと思っていましたが、そんなのは見せかけだと分かりました。その気になれば一人の人間の人生や命なんか指先一つでどうにでもできるんですね」
助手席で紀夫の息子が頭を窓に押しつけるようにして眠っている。彼も九旗家の血を受け継ぎ特殊な力を持っているのだろうか。

 

創作小説ランキングサイトに登録しました。よろしければ下記リンクをクリックお願いします。http://www.webstation.jp/syousetu/rank.cgi?mode=r_link&id=3967


タグ:小説 大江山
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(2) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2