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第1章15 [宇宙人になっちまった]

 後藤ドクターはそこまで言うと一息ついた。誰も黙ったまま質問も出来ないでいる。余りにも唐突な話で理解の範疇を超えているのだろう。ドクターは皆の顔を見ながら話を続けた。
「まず、ペルーと君たちがどう繋がるかということから説明しよう。私が学会で発表した頭部腫瘍についての論文と君たちのDNAサンプルを、ペルーで頭部変形ミイラの調査研究をしている山下という日本人研究者に送ったんだ。私の後輩でね、親しい間柄なんだ。君たちも知っていると思うが、ペルーはミイラの宝庫で、その中に頭部が異常に変形したミイラが多く出土しているんだ。その中に君たちそっくりな特徴を持った頭蓋骨があるんだ。しかしその大半は人為的に、つまり乳幼児の段階で頭部を板で挟むようにして長く延ばしていたんだ。その理由については諸説あるが、当時の支配者とか神とかの姿に似せようとしたのではないかと言われてるんだ。大きく膨らんだ頭部のコブは憧れの存在だったんだろうね」
 後藤ドクターはそこまで話すとペットボトルを口に運んだ。
「先生、わたしそのミイラの写真見たことがあります。私のコブは自然に出来たし、そんなに大きくないのでミイラとは関係ないと思うのですが」
 夢実は自信無さそうに小さな声で言った。
「そうだね、人為的に変形させられた頭蓋骨とは関係ないよ。君たちと同じだったのは、パラカスの頭蓋骨と呼ばれる三百体ほどのミイラのことだ。二千十四年に発見されたばかりでまだ不明なことも多くてね、遺伝子は二回調べられてデータも公表されているよ。一回目の結論は地球上の生き物ではない可能性が高いと報告された。二回目はこのミイラの祖先はヨーロッパだろうと報告された。現在はヨーロッパ説が主流だがまだ結論は出ていない。だがDNA以外にもう一つ重要なことがあって、それは脳容積と頭蓋骨の重さなんだ。人為的な変形では容積も重さも変わらないんだ。形が変わっただけでね。でもパラカスの頭蓋骨は容積が二十五%増え、重さは六十%増えているんだ。そして最大の特徴は、頭蓋骨はお椀のように1つのパーツで出来ていることなんだ。通常は前と側頭部が二つ、そして後頭部の四つのパーツなんだ。つまり、ホモサピエンスとは構造から違っていると言うことなんだ。君たちはそのパラカスの頭蓋骨のDNAと多くの一致点があるということだ。私はその分野の専門家ではないから詳しい説明は出来ないけどね。ペルーの友人によると、君たちの存在が最大の謎だと言っていた」

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