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第1章16 [宇宙人になっちまった]

 そこまで話すと、ドクターは質問を求めた。しかし何を質問していいのか分からないようで誰も言葉を発しない。視線を虚空に向け何かを考えているように見える。
「浜辺君、どう思う?」
 後藤ドクターは一番年長の浜辺に訊いた。
「つまり、僕たちの祖先はヨーロッパか地球外と言うことですか?」
「そうだね、パラカスの頭蓋骨が仮に地球外由来だとすれば君たちも同じということだろう。
 公式発表は何かの圧力があったのか、ヨーロッパ起源のホモサピエンス亜流で、突然変異が原因とされたようだ。だけど石川君は実際に現物を調査した手応えから、パルカスの頭蓋骨は絶対地球人ではないと断言していた」
 ドクターは淡々と説明した。
「僕は普通に母親から生まれて普通に育って、中学生になった頃から頭頂部が膨らんできただけなんですけど、それのどこが宇宙人なのですか?」
 敬一が立ち上がって話すと、他の参加者も頷いている。
「僕もそう思うよ、目の前にいる君たちが宇宙人だとは思えない。どう見たって普通の高校生だよ。だけどサードブレインは日々大きくなっているし、DNAの分析結果を信じるならどうするのが一番いいのか随分迷ったんだよ。後輩の言うことを無視して通常の診察を続けることも考えたよ、むしろその方が無難だと思う。だけどね、サードブレインで起きていることは今まで学んできた医学の常識が覆されるような出来事なんだ。論文でも発表したけど本質を理解できている人は殆どいないと思う。だから僕は僕のやり方で真実を確かめようと思ったんだ。こんな話を公に発表したらマスコミは面白がって飛びつくだろうけど、その日から僕は変人扱いだろうね、。それで考えたのが、患者の会を通じて君たちと一緒に調べようと思ったんだ。君たちの協力無しには出来ないからね。どうだろう、協力してもらえるだろうか」
 後藤ドクターはそこまで話すと深呼吸するように大きく肩を動かした。
「自分の身体のことだし、いくらでも協力します、けど、 その、何というか、つまり、サードブレインが成長してくると僕は宇宙人になるんでしょうか?」
 背の低い大橋という男子が訊いた。

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