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第4章02 [宇宙人になっちまった]

 予定より早かったせいか研修室にはまだ誰も来ていない。夢実は絵里子に落ち着きが無くなったことに気付いた。
「浜辺くんまだ来てないよ~」
 夢実が意地悪っぽく言った。
「別に待ってないよ、エフはまた円盤で来るのかなって思ってただけよ」
 絵里子はそう言って誤魔化したが、視線は空ではなく、駅方向ばかり見ている。夢実は絵里子に言われてエフが気になり始めた。今日も円盤で来るのだろうか。
 敬一と陽介は夢実たちとは別のところで話している。夢実は敬一と色々話したかったのに不自然な感じで夢実たちを避けるように移動したのだ。どうせ学校の女の子の話でもしているに違いない。そう思って近寄らないようにしている。
 室内のあちこちで話し声や笑い声が響き始めた、浜辺青磁も仲間と楽しそうに話している。絵里子はその中に入れず夢実と一緒にいる。
「いいかな、全員集まった?」
 後藤ドクターの大きな声が聞こえると、浜辺がそれとなく人数を数えた。
「全員来ています。あと、エフだけです」
 そう言われて皆が窓の外を見たとき、
「お待たせ」
 と言ってエフがドアから入ってきた。小さなエフはテーブルほどの高さで、首を伸ばさないとよく見えない。どうやってここまで来たのか分からないが、ドクターはエフを確認するとすぐに本題に入った。
「それではまずそれぞれの班の様子は僕から話そう。どの班も直接悪魔に襲われたという話は聞いていないが、身近なところで悪魔を目撃した事例はあった。実害は無かったが、危なかった事例もある。サードブレインが近くにいなかったら確実に犠牲者が出ただろう」
 ドクターは簡単に各班の状況を話すとエフを前に呼んだ。小さくてよく見えない。ドクターはエフを抱き上げ机の上に座らせた。
「スーツは着ているよね、着れば着るほど馴染んでくるからね」
 皆は頷いてエフの話を聞いている。
「知りたいのは岩田、清水、千葉の三人のその後だよね。状況は知ってる通り警察に追われている。僕は和歌山の上空から様子を探ったんだ。逃げた方向には余り人がいなくてね、ひどく時間かかったけど、ウェーブを使って三人の反応を見つけたんだ。古くて壊れそうな大きい建物があってね、そこに居るってわかった。余り近くまで行くと悪魔に気付かれるから詳しくはわからないけど、そこは三人だけじゃなくてね、もっと沢山の人がいるみたいだった。それとね、人の数よりもっともっと沢山の悪魔も感じたんだ。何か企んでいるのは間違いないよ。このままにしておくと大変なことが起きそうな気がするんだ。人間の警察なんか役に立たないからね、乗っ取られておしまいだよ。だからね、僕たちしかいないんだ。奴らの正体が分かるのは僕たちだけなんだ。僕はこの星が好きだからね。奴らの好きにさせたくないんだ」
 今日のエフは笑顔を一度もを見せないし、いつもの幼い話し方でも無い。感情的で、聞いている者に危機感を感じさせる。

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