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第4章03 [宇宙人になっちまった]

「常識的な判断としては、警察に任せるのが一番だがね。しかし、エフの言うように警察は役に立たないだろう。拳銃を持った人間が悪魔に乗っ取られたらおしまいだからね。悪魔の思う壺だよ。かといって余り君たちに関わらせたくないんだ」
 ドクターはそれだけ言うと黙り込んでしまった。
「あの、僕のグループが和歌山に行って偵察してきます。三人とは誰も会ったことないので顔を見られても大丈夫だと思います。近くまでエフが連れて行ってくれれば簡単です」
 言ったのは陽介だった。確かに陽介の言うとおりだと敬一も思った。
「僕も大丈夫です。ハイキングだと言えば怪しまれることはないと思います。限界集落や廃校を訪れるのは密かなブームですから」
 敬一が賛成すると、
「私も行くわ。敬一のサードブレインより優秀だから悪魔もすぐ見つけられるしね」
 元気な声で夢実が言った。
「夢実が行くなら私も行くわ。でも怖くなったらすぐ迎えに来てね。それと時間が余ったら温泉行ってホントのハイキングもしたいわ」
 絵里子は温泉とハイキングが目当てのようだ。敬一は絵里子が一緒だとお荷物になりそうだと思ったが、夢実は一緒に行くつもりなのでなんとも言えない。
「僕も一緒に行くよ。あそこに何があるか確かめたいんだ」
 エフが来てくれるのが一番頼りになる。敬一は心強く思った。
「あ、でもね、一つ言っておくけど、僕は円盤から外に出ると弱いんだ。だから何にもできないよ。持ち出せる道具もあんまりないしね」
 エフは申し訳なさそうに言った。
「大丈夫、俺に任せろ、オンブしてやるよ」
 陽介が威勢よく言った。
「そうか、わかった。他に選択肢はないようだね。僕も一緒に行きたいけど、顔がすぐにバレてしまうからね。よろしく頼む。こちらでできることがあれば何でも協力する。遠慮なく言ってくれ」
 ドクターはそう言って敬一たちに頭を下げた。しかしなかなか頭を上げない。
「先生、そんなにしなくてもいいですよ」
 敬一が言うと、ドクターはゆっくり頭を上げた。
「そうだな……その通りだ……」
 獲物を狙う蛇のような目が敬一を睨んだ。
「先生!」
 そこまで言うのがやっとだ。突き刺すような視線に身体が動かない。教室の中が凍り付いた。
「どうせ……俺らは……死ぬ……死ぬんだよ!」
 ドクターは大声で叫び、机を突き飛ばしながら窓際に走った。
「陽介止めろ!」
 敬一が叫ぶと、陽介はドクターの腕を掴んで引き戻そうとしたが、勢いのまま頭から窓に突っ込んだ。窓ガラスは鈍い音を立てて外に飛び散り、上半身から外に飛び出してしまった。敬一はかろうじてドクターの足を捕まえたが、重さに耐えられず手を離してしまった。誰もが落ちたと思い、地面に叩きつけられたドクターの姿を想像した。窓際にいた陽介が下を覗き込むと、円盤がゆっくり上昇してくるのが見えた。その上にドクターが額から血を流して倒れている。

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