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終章02 [宇宙人になっちまった]

 そのほかにも色々連絡事項があったが、このユニコ会は定期的に続けていくようだ。今のところ十六名から増えていない。
 最後にドクターは大事な話があると言って、窓を指さした。窓の外に小さく円盤が見える。そう言えばエフの姿が見えなかった。
「エフからの伝言を伝えるよ」
 ドクターはそう言って話し始めた。
「本当は君たちの前に行きたかったけどね、今日は忙しいからね、それでね、言いたいことを言わなくちゃね。僕は知ってるんだ。君たちの父親のことをね。隠していたわけじゃないけどね……実は僕なんだ。でもエフじゃないよ。エフはね、僕の可愛いロボットなんだ。僕はずっと円盤の中にいて君たちを見ていたよ。ドクターにね、僕の写真データを渡しておいたよ。きっと君たちのお母さんが持っている写真に似ているはずだよ、本人だからね。前にも言ったけどね、君たちと僕はどこにいても話ができるからね。すぐに返事をするよ。そろそろ行かなくちゃね。
 そうだ。大事なことを忘れていたよ。君たちにお礼をまだ言ってなかったね。ありがとう。君たちは僕が頼んだ三つのことをやり遂げてくれたからね。
一つ目、サードブレインを信じること。
二つ目、君たちの仕事は悪魔を見つけて懲らしめること
三つ目、君たちは宇宙人になる。
 一つ目と二つ目は文句なしだね。本当に君たちは立派だったよ。三つ目だけどね、今はわからないかもしれないけどね、僕と同じになっていると思う。スイッチング遺伝子がオンになってるからね。君たちは人間を殺そうとしたり、考えただけでも頭が凄く痛くなるんだ。そんなことはないだろうけどね、大事なのはね、その遺伝子が君たちの子どもを通して未来へ繋がることなんだ。楽しみだよ。きっとこの星は宇宙でも超貴重な場所になるね。それじゃね、僕の家に帰るね、用事が山積みだよ。気が向いたらユニコ会に出るよ」
 ドクターは話し終えると写真を渡してくれた。母親が見せてくれた古びた写真に写っていた男の人がそこにいる。オヤジだった。夢実と血が繋がっていることがはっきりしたから、誕生日の早い夢実は敬一の姉になってしまった。敬一は早速エフに、夢実と結婚できるか聞いたら、「まぁ、いいと思うよ」と返事をくれた。
 窓の外を見たら、もう円盤は見えなかった。
 ユニコ会から数日が過ぎ、高校生活もようやく再開した。心に傷を負った生徒も多くいるが元気を出して頑張っている。
 敬一と陽介は久しぶりに天文部を覗いてみた。部室には以前と比べると人数は減ったが、活発に活動を再開したようだ。四階の一番奥の部室だ。ドアの小窓から覗くと長テーブルの端に綾音が座っているのが見える。しばらく入院していたと聞いたが退院したようだ。
「やぁ、見学だけどいいかな」
 敬一はこの前と同じように声をかけると中から部員が出てきて奥まで案内してくれた。
綾音が嬉しそうに俺たちを見ている。
「いらっしゃい、いいところだったわ。天文ドームの整備が終わったから案内するわ」
 綾音は二人を交互に見ながら言った。
「あ、ありがとう、俺、暗いところ苦手だから、ドームはいいかな」
 敬一はそう言いながら綾音の瞳の奥を覗いた。くりくりした瞳の奥には無邪気な女子高生が輝いているだけだった。
「残念ね、隣の風見陽介さんはどうですか?」
 綾音はくりくりした瞳を陽介に向けた。
「あ、俺も暗いところ苦手だったわ、それより今度どこか行こうよ」
 陽介は誘われついでに、みんなの前でちゃっかりナンパして照れている。
「それじゃ、夏休みになったらね、山梨にいいドームがあるの」
 綾音は嬉しそうに返事をした。オーケーのようで、陽介はバレバレに照れている。結局二人は部員から活動の計画を聞いただけで早々に部室を出てきた。
「やったな陽介! 綾音ちゃんかわいいな」
 敬一はそう言いながら陽介の尻を蹴り飛ばした。
「痛えな!」
 陽介は照れながら言った。
「俺さぁ、最近頭のてっぺんが変なんだよね、見てくれる」
 陽介はそう言って頭を敬一の前に出して見せた。敬一が手で触ると少し膨らんでいるようだ。
「なんか膨らんでる。お前も!」
 敬一が言うと、
「俺も……宇宙人になっちまった」
 二人は肩を組みながら階段を降りていった。
                                                                                                    了

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