SSブログ

第1章04 [宇宙人になっちまった]

 午後の最初の授業は英語で、眠い目を擦りながら板書された文字を書き写していると、陽介からの着信があり、ネットに記事をアップしたと伝えてきた。敬一は相変わらずの早業に驚いたが、何かが弾けてしまったように感じた。開き直りのような感覚かも知れない。こうなったら陽介のやりたいようにやればいい。何かが始まりそうな予感がする。敬一は高ぶり始めた自分の気持ちが不思議だった。陽介のネット操作が功を奏したのかコブへの興味なのかどちらとも分からないが、敬一が陽介と下校する頃には大半の学生が敬一の秘密を知っていた。中学の頃のような単純で爆発的な興味本位の関わりはないが、普段話したことのない奴が視線を向けてくる。敬一は視線に気づいて見返すが、向かってくる視線は脳天に向けられているのが分かる。
「ネット恐るべし、全校拡散だな。どうやった?」
「フェイスブックにツイッター、ユーチューブ、インスタ辺りから始めたよ。ユニコーン高校生発見ってことにした。まぁ、ベタだけどな」
「ユニコーンって、そんなツノになってねえし」
 敬一は不服そうに言った。
「いや、ちょっとだけ加工したら、なかなかいいのが出来たから……」
 歯切れが悪く、そこだけは声が小さくなった。
「加工した?」
 敬一のスマホからも確認できるが、陽介の携帯を取り上げて見た。静止画像では実際よりも5センチほど高くし先端を尖らせ、おまけに色もやや金色系にしてある。動画になると、ちょっとやり過ぎで、コブの先端から光線が飛び出し、癒やし光線発射と書いた吹き出しがある。さすがにこの動画はひどい仕上がりだが、静止画の加工は見抜けないだろう。本物のツノに見える。敬一は明日からの登校が憂鬱になってきた。地味で目立たない山谷敬一は今日で終わった。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。