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第1章28 第2章01 [宇宙人になっちまった]

「このまま帰ったらそうなると思う。さっきね、頭が熱くなったり痛くなったりしたでしょ、アレは僕のせいなんだ。サードブレインが猛スピードで活動を始めたんだ。数時間で成長の最後のステージになると思う。そうなると悪魔の奴らに気づかれやすくなるんだ」
 エフはそう言うと窓の外を確認するように眺めた。
「じゃぁ、どうすればいいのよ?」
 夢実が言った。
「僕の言うとおりにしてくれれば悪魔なんかにやられたりしないよ。それをこれから教えるからね」
 エフはそう言うともう一度窓の外を見た。そこには先ほどの円盤が何事もなかったかのように静止して浮かんでいる。
「みんな乗って! 窓から外に出て歩くんだよ。見つかると騒ぎになるから急いでね」
 エフはそう言うと夢実の手を引いて窓から出るように促した。夢実は頭が麻痺してしまったようにエフに促されるまま窓枠に手をかけて外に出た。夢実の足が円盤に触れると足もとが光り誘導するように点滅している。他の高校生たちが夢実の足取りを呆然と見ていると、続いて乗るように促され、やはり何かが麻痺したように整然と窓枠を超えていく。絵里子や敬一の友達の陽介、ドクターの後藤も一緒に乗り込んだ。全員が乗り込むと円盤は雲の中へ吸い込まれるように消えていった。
     第二章 
 最初に気がついたのは敬一だった。柔らかな床に横になっている。窓枠に手をかけたことは覚えているが、その後どうやって中に入ったのかは覚えていない。身体を起こすと目の前には暗闇の中に浮かぶ地球が見える。映画や写真などで見た地球と同じだ。薄暗い室内を見廻すと、何人かが身体を起こしている。隣に陽介がいて放心したように地球を眺めている。
「陽介、俺たち地球見てるぞ」
「あぁ、地球だ、マジかよ、信じらんねぇ」
 二人はそれだけ話すと後は黙って地球を見ている。不安なことは山ほどあるが目の前の景色がそんな気持ちを吹き飛ばしてくれる。他の高校生たちも気がついて二人と同じように地球を見ている。女子の小さな悲鳴が聞こえたが、その後は誰の声も聞こえない。
「ようこそ、みんな気がついたね」
 エフが部屋の隅から声をかけた。
「説明しなくてもわかるよね、ここは宇宙空間で君たちは円盤に乗っているんだ。君たちの星は美しすぎるよね。何度見ても飽きない景色なんだ。僕はね、このくらいの距離が一番好きなんだ」
 エフはそれだけ言うと黙って地球を眺め始めた。

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