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第2章03 [宇宙人になっちまった]

「それならいいんだけどね、実際はとてつもなく恐ろしくて手強くてね、僕らは負けたことの方が多いと思うよ。負けるとね、とことん利用されて最後は乗っ取った身体を壊して次の餌食を探すんだ。君たちの宗教に出てくる悪魔とか悪霊とかは空想の産物だと思ってるかも知れないけど、あれはね、本当なんだよ。身体を乗っ取って操るなんて嘘みたいだけどね、普通によくあることなんだ。君たちの近くの虫だって同じことしててね、ハリガネムシって名前だったかな、カマキリなんかに寄生するんだ。寄生したらね、カマキリの脳に特殊なタンパク質を出して操るんだ。そしてね水際に行かせて水の中に飛び込ませるんだ。ハリガネムシはカマキリの身体から出て水の中でメスを探すらしい。虫だってこの程度のことは出来るからね、悪魔の奴らが人間を操るなんて簡単だと思うし幻覚を見せることだって出来るよ」
 エフは円盤に乗ってから饒舌になっている。
「そんな恐ろしい奴らと戦わせるために私たちにサードブレインをプレゼントしたってことなの?乗っ取られたら操られてどうにも出来なくなるんでしょ。私は絶対嫌だわ。お断りよ。すぐに家に帰して」
 夢実はエフに詰め寄って言った。
「確かにね、サードブレインが完成すればあっという間に乗っ取られてしまうからね。だからセンサーを用意したんだ」
 エフはそう言うと壁からネックレスを取り出した。
「君たちの世界では昔から十字架のネックレスを魔除けに使っていたよね、あれは正解なんだ。十字架じゃなくてね、金属が有効なんだ。金が一番だけどね、少し混じっているだけでも効果はあるんだ。僕の用意したのはもっと強力だけどね。このネックレスを着けていれば奴らが近くに来たことがわかるんだ。少し肌がチクチクするけどね」
 エフはそう言って皆にネックレス配り始めた。
「それでどうすればいいの?」
 夢実が訊いた。
「近くに来たことを頭が理解すればもうそれで大丈夫。頭が勝手にバリアーを作ってくれるからね。サードブレインは優秀なんだ」
 エフはそう言うと正面の壁に何かの画像を映し出した。ほとんど外国人の映像で、どこかでみたことがあるような顔や、教科書で見たような顔が次々に壁面に浮かんでは消えていく。すぐにわかったのはヒトラーだった。どこかの国の将軍様もテレビで見慣れた顔だ。どの顔も悪そうに見える。

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