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第2章04 [宇宙人になっちまった]

「みんな悪魔に頭を乗っ取られたんだ。たくさんの人を殺した人ばかりだよ。死んだ人もいるし今も殺している人もいるんだ。なんとかしたいけどね、僕らには出来ないんだ。君たちと僕らは遺伝子的にはかなり似ているけどね、大きく違うところがあるんだ。それはね、僕らは進化の過程で自分で自分たちの遺伝子を組み直して生き物を殺せなくしたんだ。
殺そうとするだけで脳が拒絶反応を起こして激しく痛むんだ。究極の選択だったけど正しかったと思う。唯一の弱点はね、僕らとは真逆の奴ら、生き物を苦しめて殺すことで最高の快感を味わう奴らをどうにも出来ないことなんだ。ただネックレスで自分たちを守ることが限界なんだ。だから頼れるのは君たちだけなんだ。君たちなら悪魔の奴らをなんとか出来ると思う。出来れば殺して欲しいけど、僕らは殺すって心で思うだけで頭が痛み始めるから口にするのも嫌なんだ」
 エフは顔を歪めて話を止めた。
「エフの話を信じるとしよう。だけどね、行方不明の三人以外には悪魔と関係ありそうな人間は近くにはいないよ。地球を滅ぼそうとしてるって言われてもピンとこないんだ。明日からもいつもの日常が続くように思う。それともいきなりドカンと何かが起きるの?」
 ドクターは納得できないようだ。
「悪魔の奴らも色々なんだ。一人を散々苦しめて殺すのが好きな奴もいればね、一度にたくさんの人を殺すのが好きな奴もいるんだ。心配しているのはね、一度にたくさん殺そうとする奴なんだ。今はね、ピースを一つ一つ揃えながら完成を楽しんでいるような気がする。最後のピースが揃うとね、大災害とか、大爆発とか、大量死とか、戦争だってそうかも知れない。なにかそういうカタストロフィーが起こるんだ。大事故だってほとんどは悪魔の仕業だと思う。色々な偶然が重なったように見えるけど、巧妙に仕組まれたピタゴラスイッチが寸分の狂いなく最後の瞬間に向かって動いているんだ」
 エフは丁寧に話してくれるが、別の世界の話のように聞こえる。
「円盤に乗ってこの目で地球を見ているから宇宙空間にいるんだって実感できるの。でも悪魔は見えないし、痛くもかゆくもないから本当にいるって思えないわ。それに悪魔の仕業だって言う証拠はあるの?」
 夢実は伏し目がちに訊いた。
「証拠が見たいのなら見せてあげるよ、円盤ならセンサーが使えるから悪魔を見ることが出来るんだ。それじゃね、君たちの街の上空に移動して探してみるよ」

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