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第2章05 [宇宙人になっちまった]

 エフがそう言うと、球形に見えていた地球があっという間に目の前に広がり、見慣れた高層ビルが眼下に見えている。恐ろしいほどのスピードで動いたはずなのに、何一つ変化を感じることはなかった。リビングで寛ぎながら画面を眺めているのと変わらない。
 午後の東京はいつもと変わらず高速は渋滞し、旅客機やヘリコプターが数機飛んでいるのが見える。
「飛んでるの見つからないの?」
 夢実が訊いた。
「大丈夫だよ、君たちは電波とか可視光で見るからね、だから見つかることはないよ。でも時々ね、なんと言えばいいのかな、君たちはオーラとか言ってるけどね、あれが見える人には時々見つかることがあるよ。肉眼で見えたと思っているけどね、本当は脳の視覚細胞が直接感じているんだ。僕らが悪魔を監視するのに使うウェーブに敏感な細胞の持ち主なんだ。最初は驚いて大騒ぎする人もいるけどね、その内に見慣れてしまうんだ。でもね、そういう人とは友達になったりするんだよ。だってね、僕らは円盤からウェーブ使わないと悪魔を見つけられないけどね、敏感な人は円盤を見つけるのと同じように悪魔も見つけることも出来るんだ、凄いよね。悪魔って肉眼では透明にしか見えないんだよ。それがね、エネルギーが集中している悪魔の存在空間を感じることが出来てね、しかもそれが色で見えてしまうんだよ。君たちはオーラって言ってるけどね、そこに悪魔が見えるときがあるんだ。だからね、その人たちと友達になってね、色々教えてもらうんだ。その人たちはね、悪魔のエネルギー状態までわかるんだ。落ち着いているとか、興奮しているとか、弱っているとかね。だから見つけた時とか、何かやらかそうとしているときには僕らを呼んで教えてくれるんだ。呼ばれてもね、出来ることは悪魔の嫌いな電磁波を浴びせるくらいだけどね。乗っ取っているときに浴びせると頭から出にくくなって弱ってしまうし、空間で浴びせると脳を乗っ取ることが出来なくなるんだ。要するに活力を失ってしまうんだ。でもずっとじゃないけどね。その内に回復してまた悪さを始めるんだ」
 エフは困ったような顔をして見せた。
「悪魔や円盤が見える人がいるってことは分かったわ。私も悪魔を見てみたい。どこにいるの?早く見つけて」
 夢実は少し興奮している。まるで動物園にライオンでも見に行くようだ。円盤は少し高度を下げて人の歩いている姿がはっきり見えるようになった。それなのに空を見上げる人もいないし、気づいているような人はいない。エフの言うように見えていないようだ。ウェーブというのが何か分からないが、きっとそれで探しているのだろう。エフも黙ったままで他の人も黙って下界を見つめている。
「あ、あれだ!」

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