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第3章8 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「俺もなぜって考えるけど、未だに何もわからないままだね。希良さんは何を思ったの?」
 祐介が訊いた。
「さっきね、カズさんが言ったでしょう、異星人は共通の感覚を伝えようとしたんじゃないかって。私もそうだって思った。異星人が私と同じように感じてるとしたら凄くない? そんなこと誰にもわからないし証明もできないけどね。私は異星人はあの感覚を伝えようとしたんだと思う。私がそれをどんな風に感じたのか、もしかしたら、私の体内データーを細かく分析して推測しているかも知れないし、表情なども分析しているかも知れないと思うの。そして私が彼らと同じ感覚を味わったことを確認しているような気がする。つまりね、感覚そのものがメッセージじゃないかしら」
 希良は少し早口で話した。
「感覚がメッセージ?」
 祐介が言った。
「そうよ、感覚。言葉じゃ伝わらないものよ。同じ宇宙空間に暮らしている生命体だからこそ共有できる感覚があると思うわ」
 希良は確信したように言った。
「なるほどね、共通感覚か。昔、共通感覚論なんていう哲学書があったけど、まぁ、そんな難しいことじゃなくて、異星人と地球人が共感できるってことだね」
 カズが言った。
「なんかいい感じね。異星人が急に友達みたいに思えてきたわ。私たちと同じように喜怒哀楽があるのかしら」
 紗羅が嬉しそうに言った。
「喜怒哀楽か、もしなかったらそれは機械だね。人工知能は相手の喜怒哀楽を認識することはできるけど、人工知能自身が喜怒哀楽を感じることはないからね。演じることはできるだろうけどね。だから、たとえどんな姿形をしていても共通の感覚はあるはずだよ」
 カズは力強く言った。
「なんだか楽しくなってきた。もう一度乗せてもらえないかな」
 希良が言った。

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第3章7 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「なんて言えばいいんだろうね、今日はUFOに乗った生々しい体験談を聞くはずだったけど、予想とはかなり違ったね。俺はね、昔の映画で未知との遭遇で観たような異星人を想像していたんだ。円盤の中にそんな異星人がいてね、握手で迎えてくれたのかなと。嘘でもそんな話を聞きたかったね。でも現実は俺の頭脳の遙か向こう側にあるんだね。話を聞きながら一つ思ったことがあってね、希良さんの言った完璧な静寂という感覚は、異星人も同じように感じているんじゃないかと思ったんだ。異星人は完璧な静寂という共通の感覚を伝えようとしているんじゃないかな。何かとても重要なことかも知れないね。ちょっと興味がわいてきたね。異星人の姿形がどんなだろうかなんてことは取るに足らないことのように思えるよ」
 カズはそう言うと次の盤をターンテーブルに乗せた。
「ところで、希良さんは飯野淳子さんと話したことある?」
 紗羅が訊くと、顔を知っているだけだと答えた。紗羅は淳子から宅急便で送られてきた青い石のことを話した。希良が何か知っているのではと思ったのだ。
「私は屋上に下りたときは何も持っていませんでした。でもそんな石を持ち帰った人がいるとは知りませんでした。もう少しサークルに出ていれば話せたかも知れませんね」
 希良が残念そうに言うと、
「おいおい、それってとんでもないことだぞ、そんな石を持っていて大丈夫なのか? 爆弾とかじゃないのか、地球が一発で滅びるほどの」
カズが手を大きく動かして言った。
「残念だけど爆弾じゃなさそうよ。でも重要なメッセージだと思うわ。大統領でも学者でもない無名の淳子さんに持たせたことも何かのメッセージだと思うわ」
 紗羅が言った。
「何かのメッセージだとしても、異星人は相手を間違えたんじゃないかな。飯野さんや俺たちじゃ、メッセージを読み解けないし、仮に読めたとしても何もできないと思うよ」
 祐介が言った。
「ここにいる沙羅さんと祐介さんはUFOを間近で見たことがあって、私は乗ったことがあって、ここにはいないけど、飯野淳子さんは不思議な石を持ち帰りました。マスターはここのオーナーで、この場所で私たちは知り合いました。私はあれからずっと考えていたんです。UFOはなんで私を乗せたんだろうって。なんの影響力もない平凡な私なのかって。答えはまだ見つかりません。でもさっきのカズさんの言葉を聞いて思ったことがあるんです」
 希良はそこまで話すと大きく息を吸った。

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第3章6 [メロディー・ガルドーに誘われて]


 希良は話し終えると目を閉じた。わずかに微笑んでいるようで幸せそうに見える。カズはその表情を見ながら首を左右に動かし、つられるように微笑んだ。
「完璧な静寂って、どんなかしら」
 紗羅が言うと、希良が目を開けた。
「うまく言えないけど、空間に溶け込む感じというか、空間と自分の区別がなくて、それは頭の中も一緒なのよ。昔ね、高校の禅寺合宿で座禅を組んで心を無にするとか言われたけど、思えば思うほど頭の中は騒がしくなったわ。でもそれがちっともないの。頭の中も宇宙に溶け込んだみたいでシンと静まってるの。そう、自分が宇宙そのものだった。それが完璧な静寂だったわ。でも、これは実体験する以外理解できないと思う」
 希良はそう言うとコーヒーを口に運んだ。
「UFOに乗った話を聞いているはずだけど、なんだか哲学とか宗教とかの話を聞いているみたいね」                                         紗羅も同じようにコーヒーを口に運んだ。
「で、その後は?」
 カズが訊いた。
「それだけなの、気がついたら屋上に一人で立ってた。もう日が暮れてたからね、一時間は過ぎてた。でもあの空間にいたら時間なんて関係ないってわかった。例えばね、一秒と千年はイコールなの」
「俺たちの聞いている話はとんでもなく凄い話なんだけど、でもそんな気がしないんだよね、なんか特別感がないね」
 カズはそう言って笑うと、
「マイルスのレコードはUFOに乗った後に聴いたの?」
と訊いた。
「私は満ち足りた気持ちで部屋に戻ってぼんやりしていました。ぼんやりしているように見えても私は幸福感に満たされて、もう何も要らないって気持ちでソファーに座っていました。そんな私を見た父がこのレコードをかけてくれたんです。もしかしたら父は私が何か思い詰めているように見えたのかも知れませんね。でも凄くフィットしたんです」
 そう言って希良は笑った。

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第3章5 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「それで、中はどんな感じだったの?」
「最初に目に飛び込んできたのはマンションの屋上でした。自分がいるはずの屋上を見下ろしていたんです。モニター画面とかそんな感じじゃなくて、向こうが透けて見えているように思いました。自分がどこにいて、どうなったのか、このときは混乱して慌てました。それで周りを見てようやく円盤の中かもって思いました。でも機械的な感じはまるでなくて、心地よい何もないところに立っていました。なんて言えばいいんでしょう、部屋と言うより空間という感じです。床とか天井とか壁面とかの区別がないんです」
 希良は天井を見上げるようにしながら話した。
「もう俺の理解の範疇はとうに超えてるね。いちおう訊くけど、異星人はいたの?」
 カズは疑うのを諦めたように訊いた。
「なんて言えばいいのか、何かの存在は感じるのに、目に見えないし、声も聞こえません。だけど色々伝わってくるんです。きっと会話もしていたはずなのに、何を話したか覚えていないんです。」
「聞けば聞くほど不思議だね、君を疑うわけじゃないけど、午睡の夢とか幻覚とかの可能性はどうなの?」
 カズはそう言うと腕組みをした。
「私もこれは何かのトリックか夢かと思いました。だけど私の深いところにある何かが、信じろってメッセージを送ってくるんです」
 希良はそう言うと困ったように微笑んで見せた。
「UFOを見たのは私も経験あるから間違いなく事実だと思う。幻覚でも夢でもないわ。そこから先の希良さんの話は本当に不思議だと思うけど、でも相手はUFOよ、頭の上で浮かんでいたのよ。何があっても不思議じゃないわ。なんだってあり得ると思う。地球人のちっぽけな常識なんて邪魔なだけよ。希良さんを百パーセント信じるわよ」
 紗羅が言った。
「それからどうなったの?」
 カズが訊いた。
「あっという間にマンションが見えなくなって、次に覚えているのは星に囲まれていたことかな。それが全方位だからその美しさはとても言葉なんかじゃ伝えきれないわ。自分は円盤の内部にいるはずなのに、感覚は体一つで宇宙空間に浮かんでいるような気がしたわ。静寂よ、完璧な静寂」

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第3章4 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「この盤をリクエストした人は君が初めてだよ。でもどうしてこの盤がそんなに気に入ったの?」
 カズは針を下ろしながら訊いた。
「気に入ったというより、特別な記憶と結びついて印象に残っているんです。聴くのは二回目です。あれ以来一度も聴いたことはありませんでした。あの日の話を聞いてもらおうと思ってここに来て、あの日のレコードを思い出したのですから。なんだか不思議な気分になりました」
 希良はそう言いながら店内に響く乾いた音に耳を傾け、会話はそこで終わった。特別な記憶が何なのか、誰も早く聞きたいと思いながら希良と同じようにマイルスに耳を傾けている。レコード盤の上を針が半分ほど進んだところで希良が口を開いた。
「あの日のことは今でも鮮明に覚えています。沙羅さんと同じように夏の夕暮れ、マンションの屋上でした。普段なら夏のマンションの屋上なんて誰も行こうなんて思いません。だけど、あの日は特別でした。クーラーの効いたリビングで携帯をいじっていました。それが急になんです。何かに突き動かされるように部屋を飛び出して屋上へ行ってしまいました。屋上なんて行く必要もないし、行ったこともないんですよ。衝動的としか説明のしようがありません。気がついたら頭上にUFOがいたんです。そこからの記憶はとても断片的で上手に説明できないと思います」
 希良はそこまで話すとコーヒーを飲んだ。
「UFOに呼ばれたって言う人もいるけど、希良さんはそんな感じはあったの?」
 カズが訊いた
「そうですね、部屋を出てから屋上まで何を考えていたのか今でもわかりません。やはり衝動的としか言いようがありません。呼ばれたって思ったのはUFOを見上げたときでした」
「で、その時の気持ちは嬉しいとか怖いとか、楽しいとか、どんな感じだったの?」
 またカズが訊いた。
「なんだか妙に納得しました。そこで記憶が飛んで、次は円盤内にいました」
「いきなり円盤に?」
 カズは不審げに訊いた。
「ええ、そうなんです。本当にいきなりだったんです。なるほどと思った瞬間に円盤内に行ってしまったんです。エレベーターのように吸い込まれたとか、映画で見るような派手な場面はありませんでした」
 希良はカズをまっすぐ見つめて話した。

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第3章3 [メロディー・ガルドーに誘われて]


 紗羅はカズとの約束を忘れたわけではないが、自分の不調を理由に先延ばしにしていたことを後悔した。自分がもう少し早く動いていれば、淳子さんが旅に出る前にカズに会わすこともできたし、この青石のことを直接聞けたかも知れなかった。紗羅の脳が回転し始めたのがこの青石のせいだとは思いたくなかったが、いつもの不調回復のスピードとはかなり違う気がしている。淳子さんが世界一周の旅に出たのはもしかしたらこの青石のせいかもしれないと思った。
 カズに淳子さんを会わせるのは流れたが、もう一人候補がいる。淳子さんは紗羅と同じように季節の変わり目が苦手なことを除けば、外向的で誰にも好かれる性格だ。もう一人も淳子さんと同じようにUFOに乗った経験を持つが、性質は正反対でおとなしく内向的で、人見知りは紗羅よりも強い。川畑希良という名前で紗羅より二つ三つ年下だ。果たして中年のジャズ好きの変わり者に出会うことを承諾してくれるか自信がない。やんわりごめんなさいと断られそうな気がした。
 紗羅は久しぶりのビザールへの階段をゆっくり下りた。気怠そうなサックスの音が次第に大きくなる。この前の賑わいが嘘のように店内に人影はなく、見慣れた景色だ。
「彼女、もうすぐ来るわ。ビザールを検索したらジャズ界では有名なのねって驚いていたわ」
 紗羅はそう言いながらカウンターに座った。すぐにドアの開く音がして振り返ると祐介が女の子と一緒に入ってきた。
「あら、希良と一緒になったの?」
 紗羅が言うと、祐介は希良を見ながら、
「階段の入り口で立ち止まっていたからね、声をかけたんだ。看板が小さくて一度は通り過ぎたんだって」
 と希良を紗羅の隣に座らせた。紗羅は希良をカズに紹介すると、自分もカウンターの中に入りコーヒーを淹れ始めた。希良は店内の様子を首をすくめるようにして眺めていたが、古いレコードのたくさん収納された棚が気になるのか、じっと見ている。
「好きに見ていいよ、何かかけようか?」
 カズが希良の様子を見ながら声をかけると、希良はハイと返事をすると立ち上がって棚の前でレコードを選び始めた。
「父もジャズファンで、家には似たような古いレコードがたくさんあるんです。だけど誰も興味がなくて今では埃が積もっています。でも一枚だけ覚えているレコードがあって、中学生の時に父が聴かせてくれました。名前はわからないのですが、ジャケットが印象的で、目を閉じた黒人が胸にトランペットを抱いたモノクロ写真でした」
 希良が話し終えると、
「一九五七年のマイルスだな」
 とカズは即座に答え、膨大なレコードの中から一枚を選び出すと、
「これかな?」
 と希良にジャケットを見せた。希良は宝物を見つけたように喜び、再生して欲しいとカズに言った
「これを中学生の娘に聴かすなんて、君の父親はなんて人だ、面白いね」
 カズは嬉しそうにターンテーブルに乗せた。

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第3章2 [メロディー・ガルドーに誘われて]


『お元気ですか、この季節は少々苦手で早く落ち着かないものかと思っています。きっと沙羅さんも私と同じような毎日を過ごされているのかと想像しています。
 沙羅さんの知り合いのカズさんのお宅を訪問するのを楽しみに待っていましたが、急に思い立ち旅行に出かけることにしました。出かけると言うよりも、この季節の日本から脱出したいというのが正直な気持ちです。沙羅さんにも時々話していました世界一周の旅です。予算は二百万と心細いのですが、何かに急に背中を押されたような気がします。
 それから、その青い塊はまだ誰にも話していません。私がUFOに乗り、戻ったときに手に握っていたものです。自分でもいつの間にこんな物を握ったのか記憶にありませんし、この青い塊の正体は不明です。沙羅さんにこれを送ったのは、なんと言えばいいのでしょうか、これを持ち続けることに少し疲れたのです。これが部屋の中にあるだけで、脳内のどこかが常に研ぎ澄まされているような感じがするのです。しかし、旅の間、部屋に置きっ放しにするのも妙に心配なのです。それで、私が旅から戻るまで沙羅さんに預かっていただきたく一方的に送ってしまいました。自分が疲れたから持っていて欲しい、旅行に行くから預かって欲しいとは、自分でも呆れてしまう言い草ですが、それでもなぜか、沙羅さんにしばらく持っていて欲しいと思ったのです。もしかしたら私よりも沙羅さんが持つ方が正解なのかも知れません。本当に勝手なことを言って申し訳ありません。よろしくお願いします。身勝手な振る舞いをお許し下さい』
 紗羅は手紙を読むと、もう一度その半透明の青い塊を色々な角度から注意深く観察した。
材質は石のようでもあるし、何かしらの樹脂製のようにも見える。指先で擦るようにすると、ガラスのような滑らかさが伝わってくる。淳子さんは脳内のどこかが刺激されるようだと伝えているが、紗羅にはその感覚はわからない。しかしUFOから持ち帰ったというのが真実なら、人類史上最大最高の出来事であることは間違いない。そんな代物を紗羅に預けようというのだ。本当ならこの変な塊は厳重なセキュリティに守られ、世界中の天才たちの頭脳を使って分析され研究されて当たり前なのだ。それを淳子さんは宅急便で送りつけてきたのだ。紗羅はしばらく考え込んでしまったが、淳子さんの言うとおりに自分が保管するしかない。こんな小さな石ころ一つ、引き出しの奥に放り込んで置けばいいのだが、妙な存在感に紗羅の心がジワジワと圧迫されているのを感じた。

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第3章1 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「それはサークルの仲間も同じ考えで、最初はみんなそう思ったわ。専門家の診断を仰いだわけじゃないけど、二人とも模範的と言っていいくらい立派な社会人で、責任ある仕事をしているし何の問題もないわ。もちろん人格とか性格とかもね。結論を言えば、サークルの仲間は信じたわ」
 紗羅の顔に強い意志が浮かんでいる。
「なるほどね、そういう話に真偽を確かめもせず飛びつく人は多いけど、紗羅のサークルの人たちは違うってことだね」
カズは沙羅を見て言った。
「そうよ、興味本位だけの人はいないわ。自分の見たことや経験したことに真摯に向き合う人たちばかりだと思う。だから私は仲間を信頼しているの。でも自分で確かめるのが一番だと思うわ。ここに呼んでもいい?」
 紗羅が訊くと、カズはいつでもいいと応えた。
         第三章
 桜の花びらが舞い始めると、心がざわざわと落ち着きをなくす。紗羅はこの時期が苦手でついつい部屋の中に閉じこもってしまう。今まで仕事が長続きしなかったのはこの時期を乗り越えられず、五月に限界を迎えて仕事を辞めてしまうからだ。
 サークルの友達をカズの家に連れて行くと言いながらまだ実現していない。ビザールにもしばらく顔を出していないし、祐介とも連絡を取っていない。祐介から連絡が来ないのはきっとカズから様子を聞いているのだろうと紗羅は思っている。だから自分からも連絡しない。落ち着いてくるのは梅雨に入る頃からだけど、今年はもっと早く動けそうな気がしている。
「紗羅に宅急便が来たわよ」
 母の呼ぶ声で、まどろんでいた体がピクンと反応した。時計を見ると時計の針は午後二時を示している。アマゾンでポチした記憶はないし、何だろうと階下に下り、玄関脇に置いてある小さな包みを手に取った。
 差出人を見ると、飯野淳子と書いてある。サークルの友達でカズの家に連れて行くと約束している人だ。十歳ほど年上で、出版社で働いている。特に思い当たる節もない。何を送ってきたのだろうか。紗羅はガムテープを剥がしながら部屋へ戻った。大きさは十センチ四方の紙製の箱のようだ。中を開けるとクッション材に何かが丁寧に包まれ、その横に四つ折りになった紙が見える。クッション材の中身が気になり包装を解くと、中から青い小さな塊が出てきた。ピンポン球くらいの大きさで、完全な球体ではなく、所々に凹みが見える。これは一体何なのか、紗羅は手の平に乗せてあらゆる角度から眺めてみたが見当が付かない。折りたたまれた手紙を広げると、淳子さんらしい丁寧に書かれた文字が並んでいた。


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第2章17 [メロディー・ガルドーに誘われて]


「飲んでるか?」
 カズがバスタオルを頭から被りながらリビングに入ってきた。
「これから私のUFO体験を話すところだからね、余計なこと言わないでよ」
 紗羅がカズを見ながら言うと、カズはハイハイと頭を動かしてソファーに座った。
「最初の体験は中学一年の夏、ビザールで話した通りよ。あのとき由美と私二人だけで屋上にいたら、今頃地球上にはいないかも知れないわ」
「あのときの由美ちゃんは普通じゃなかったね、俺のせいでUFOが来なかったとひどく責められたよ」
 カズは紗羅を見ながら言った。
「今は私と一緒のサークルで活動してるけどね、今でもあの日に戻ってUFOと一緒に行きたいって言うわ」
「由美さんも呼ばれてたんだね」
 祐介が言った。
「慎太郎君と同じよ、呼ばれたって言ってた」
 紗羅はそう言うとコップに手を伸ばした。
「紗羅のまわりは不思議な友達が多くて驚くよ。というか、紗羅のまわりに吸い寄せられてるような気がするよ。祐介君もまんまと吸い寄せられたようだね」
 カズはそう言うと祐介の方をポンと叩き、レコードを選びに立った。
「私もそう思うわ。だってね、別に呼びかけたわけでも探したわけでもないのに、いつの間にか同じような仲間が祐介さんを入れて三十三人ね。こんな活動をしているとね、情報が不思議といつの間にか集まるのよね」
「類は類を呼ぶか、不思議だね。同類を嗅ぎ分ける優秀なセンサーがあるんだね」
 カズは次の盤を探しながら言った。
「サークルにUFOに乗った経験のある人がいるとか言ってたよね、本当なの?」
 祐介が訊いた。
「サークル仲間でUFOに乗ったことのある人は二人いるわ。慎太郎君みたいに呼ばれたというのは同じよ。興味本位のテレビ番組や出版物で言われているような話とは全然違うわ。よくあるのは、誘拐されて体を調べられたとか、妊娠させられたって話が有名だけど、そんなことはなかった。アブダクションじゃなくて自分の意思で乗ったのよ。真偽を確かめる方法はないけど、私は本当だと思ってる」
 紗羅が言った。
「呼ばれて、誘われて、自発的に乗ったってこと?」
 祐介はソファーから身を乗り出すようにして訊いた。
「私が聞いた限りではその通りよ」
「そういう風変わりな主張をする人は、何か心理的な問題を抱えているような気がするけど、その辺りは大丈夫なの?」
 カズは心配そうに訊いた。

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ちょっと困ったなぁ [小説について]


 「メロディー・ガルドーに誘われて」を書き続けていますが、展開が地味すぎると感じています。子供の頃にUFOを見た、というのが物語の発端になるのですが、なかなか次のステージに進めません。ああだこうだと、登場人物が感想を述べ合うような退屈な展開に終始しています。動きが少ない、大きな変化もない。なんだか、つまらない会議に延々と付き合わされているような気分です。書いていてそう思うのだから、読んでいる人はなおさらだと思います。ああ、困ったなぁ。劇的な展開は思い描いているのですが、やり過ぎると、おいおい、それはあまりにも現実離れしすぎだろうと思ってしまいます。

 でも、今回はそんなことは気にせず、大胆な(自分の中では)展開、あり得ないような展開にしてみようと思っています。

 文章上達のこつは、とにかく書くとこ意外にないと思っています。質より量です。量を重ねれば、多少はじょうたつするのかなぁ・・・とかすかな希望を抱きながら今後も、楽しみながら小説を書いていこうと考えています

 最後に、なんちゃって・・・いつも書いてから恥ずかしくなるのです。



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