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第3章04 [宇宙人になっちまった]

 桜ヶ丘公園はその名の通り、様々な種類の桜の多いことで有名だ。すでに花は散り鮮やかな緑が若々しい。敬一と陽介は早く公園に着き、エフの話を思い出した。エフを思えばいつでも頭上に居て、乗ることも簡単だと言っていた。その時はそんなものかとスルーしてしまったが、試したくなった。冷静に考えるとそんなことは無理だろうと思うからだ。
 敬一が目を閉じると陽介は黙って空を見上げた。よく晴れた空に太陽が西に傾きかけている。所々に雲が斑に浮かんでいる。もしかしたらその雲の隙間に円盤が居ないかと細心の注意を払いながら見つめている。
「どこにもいないね、エフの言うこと信用できないな。それとも俺に見えないだけ?」
 陽介は空を見上げながら訊いた。
「そうだね、もう真上に居るよ」
「嘘だろ、何にも見えないよ。サードブレインにだけ見えるんだ。じゃぁ、本当に乗れたりするの? 勿論二人一緒にね」
 敬一の顔を見ようと視線を空から下に動かしたとき、地面が少し揺れた。地震かと思ったら、見覚えのある部屋の中に居て目の前にエフが笑顔で立っている。
「嘘じゃ無かったでしょ、僕はいつでもどこにでも居るんだ」
「どうやったの? 一瞬だったよ、有り得ない」
 陽介は興奮気味に言った。
「敬一は分かるよね、陽介はちょっと無理かな。サードブレインなら簡単な理屈なんだ。ドアを開けて普通に入るのと同じなんだけどなぁ」
 エフは二人を交互に見ながら残念そうに言った。
「俺にもよくわかんないよ。ここへ来るまで悪魔も見なかったし、大して変わってないんだけど、本当に完成しているの?」
「間違いないよ。完成しているけどね、なぜかなぁ、起動に時間かかってるかも知れないね」
「それじゃ、俺のパソコンと同じだよ」
 陽介は困ったように言った。
「頭がクリアーになった感じはないし、何かの能力が身についた感じも無いし、円盤は見えたけど、要は大して変わってないってことかな」
 敬一は少々残念そうに言った。
「ううん、おかしいなぁ、絶対変わってるはずだよ。まだ気づいていないだけだと思う」
 エフはそう言うと地上を指さした。

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