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第3章10 [宇宙人になっちまった]

「悪魔はね、個とか全体とか区別が無いみたいなんだ。奴らは一人のときは別々に動いてやりたい放題さ。乗っ取った後の行動も好みも違うしね。僕たちと同じなんだ。だけど変なのはね、人間から出てくるといきなり沢山で合体することもあるんだ。それでまた急にバラバラになったりするしね。それとね、個で経験したことがあっという間に全部に伝わっちゃうんだ。わかる?」
 エフは自分の説明に納得できないようだ。
「じゃぁ、ポットのお湯と同じね。カップに小分けしても同じお湯でポットに戻しても同じお湯だからね。そうよ、じゃぁ、コップに毒入れてポットに戻せば全部に毒が回るってことね。私って凄くない?」
 夢実は大発見をしたように言った。
「じゃぁさ、とにかく悪魔に毒を仕込めば全部に毒が回るってことね。私賛成よ。その作戦でやろうよ」
 絵里子はもうこれ以上考えるのは面倒だから賛成したような口ぶりだ。友達同士でもめたときもこんな感じで絵里子が強引にまとめてしまうパターンが多い。
「毒とかなんとか言ってるけどさ、悪魔の毒って何なの? 身体の無い奴らだよ」
 敬一が呆れたように訊いた。
「本当だわ、ダメじゃん。勝ったと思ったのに、また振り出しね」
 絵里子が残念そうに言った。
 色々考えてはみるが、相手は量子のネットワークを利用した生命体で肉体が無い。しかも個が合体したり分離したりする。いくら考えても弱点が見つからない。せいぜい奴らの嫌なことをして追い払ったり、逆に乗っ取った身体の中に大人しくさせて閉じ込めておく程度だ。ほとぼりが冷めたら息を吹き返して殺人を楽しむのだ。敬一は色々に考えを巡らせたがまだサードブレインは何も教えてくれない。
「あの三人はどうなったの? やっぱり僕と同じようにサードブレインが完成してビームとか出来るようになってるの?」
 敬一は行方不明の三人と出会ったことは無いが、悪魔がサードブレインと肉体を持ったことが気になっていた。
「僕もそれが一番心配なんだ。ノーマルな人間を乗っ取っても、その人間の能力を超えるようなことは出来ない。だけどサードブレインを乗っ取られるとやっかいなんだ。何をしてくるか予測できないんだ」

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