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第7章 その(2) [小説 < ツリー >]

呪術の本―禁断の呪詛法と闇の力の血脈 (New sight mook―Books esoterica)

呪術の本―禁断の呪詛法と闇の力の血脈 (New sight mook―Books esoterica) (単行本)

 

 

 

                      第7章 その(2)

 片岡さんは美緒の家に泊まったようでリラックスした服装でリビングにいた。
「加代子さんのことは心配だが今の状況ではどうすることも出来ないだろう。祐介君はあの男に身体を乗っ取られているときのことは覚えているのかい」
 片岡さんがコーヒーを口に運びながら訊いた。
「ええ、見たり聞いたりしたことはほとんど覚えています」
「じゃぁ、これから加代子さんがどうなるかも分かる?」
「源三郎の話だと、二根交合の秘技が七日間あるようです。確か、序の儀が二日、本の儀とか現の儀が三日間で最後が了の儀で二日間でした。それでドクロが完成するようです。そのドクロを本尊として崇拝すれば願いが叶うという話でした」
 片岡さんは腕組みをして考えている。
「ドクロ本尊なんてただ気味悪いだけで何の力も無いでしょう?」
 片岡さんに訊くと、
「ところがそうでもないんだよ。確かに気味の悪い代物だがね、気味悪いだけじゃないと思うよ。世界で見れば似たような風習は至る処にあってね、動物や人間の頭骨が使われることが多い。願いというのはね、対抗勢力を呪い殺すことなんだよ。それで世界を支配して全てを手中に収めるって訳さ。どういう理屈なのかわからないけどね、部族間の争いではよく使われたって話だよ。日本でも鎌倉時代以降密かに使われたという記録も残っているよ。れっきとした真言宗の高僧が裏で権力者と結びついて呪詛を行っていたというのは、宗門の表の記録には残っていないが事実らしい。宗門の恥としてこのことは封印されているということだ。ドクロ本尊に力がなければ問題にもならないんだが、恐ろしいほどの力があったらしい。それで天地流一派は邪宗教として厳しく弾圧されたんだ。この話は公安警察の友だちから聞いた話だ。公安という組織は徹底的に調べ上げるね、大学のサークルのメンバーを含めた全ての信者の名前まで把握していたよ。加代子さんの名前を知っていたのは驚いたけどね。大学のサークルの名前はたしか、密教オーラ研究会だったかな、中身は天地流そのものだよ。その中で選ばれた優秀な者が本体の天地流の信者に洗脳されるって仕組みさ」
「へぇー、恐ろしいわね、大学生を洗脳して何をしようというのかしら」
 美緒が感心したように言った。
「もしかしたら本気で日本を乗っ取ろうと思ってるかもしれないね。ドクロ本尊に力があるとして、優秀な若者が社会に乗り出しそれを使ってごらん、社会の中枢は知らぬ間に彼らに支配されてしまうかもしれないよ。現にあの男は蘇生の儀で祐介君の身体を乗っ取ってしまったじゃないか、もう誰も信用できなくなってしまうよ」
「でも、それでいい社会になるってことはないの? だって、根本は民衆救済を唱える宗教でしょう。方法はどうあれ、日本を仏教思想でまとめてしまうんでしょう」
 美緒は片岡さんの顔を覗き込むようにして訊いた。
「確かに民衆救済が目的だろうけどね、そうすりゃ不正を働く政治家や、金のために人を犠牲にするような企業家はいなくなるかも知れない。皆が真言を唱え悪人はドクロ本尊を使って呪い殺す。平和な国家が出来上がると言いたいところだけど、恐ろしいね、独裁社会だよ。今まで似たようなことが世界のあちこちであったけど全て失敗したね。今だって似たようなことをしているところは沢山あるよ。どこも血生臭くて平和な社会は遠のくばかりだね」
「そうかしら……。悪い奴らは罰を受けて死んでしまえばいいと思うけど」
 美緒は納得できないようだ。

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タグ:呪詛
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