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第1章22 [宇宙人になっちまった]

「私は夢実よ、あなたの名前は?」
 夢実はまるで漫画のようなまん丸な眼を覗き込みながら訊いた。
「区別する記号だね、エフにしよう」
 完璧な日本語でそう言うと遠巻きにしている高校生たちに顔を向けた。どの高校生も無意識に微笑みを浮かべている。
「こんにちは、君たちのことは知っているよ。僕と同じ構造だからね。計画通りなら出逢うことは有り得ないんだ。でも仕方なかった。夢の中で話しても、脳に直接話してもきっと信じてもらえないからね。だからこうして驚かすしかなかったんだ。百聞は一見にしかずって言うよね」
 エフはそう言うと近くの椅子に座った。足が床から浮いている。
「それでは大事なことを言うよ。一つ目、サードブレインを信じること。二つ目、君たちは宇宙人になる。三つ目、君たちの仕事は悪魔を見つけて懲らしめること」
 それだけ言うとスイッチが切れたように黙った。見た目の可愛さに反して話は一方的でしかも命令されているようだ。高校生たちはお互いに顔を見合わせたり、エフの表情を覗き込むように見たりしている。エフは微笑みを浮かべているが、その微笑みの意味も分からない。しかしその微笑みを見ていると服従することが当たり前のように思えてしまう。
「君は何者なんだ。言われたことはまったく理解できない」
 後藤ドクターがエフを見下ろしながら威圧的に言った。
「わかった。君たちはまだ幼いから仕方ないね。それに僕は言葉で伝達したり理解する方法に慣れていないんだ」
 エフはそう言うと後ろを振り返り円盤を見た。一瞬辺りが眩しく光ると目の前から円盤が消え、エフだけが取り残された。
「これでいい。他の人間がアレを見ると大騒ぎするからね。それじゃ質問に答えるよ。ぼくは神様。でも君たちは特別だからエフでいいよ」
 円盤があっという間に雲の間に消えたのを目の当たりにした衝撃で話が頭に入らなかった。エフが自分を神だと言ってもすぐには理解できない。
「神って言った?」
 夢実が訊いた。
「そうだよ、僕は君たちの神様なんだ」
 エフはそれが当たり前のように言った。怪訝な顔をしてエフを見たり、噴き出しそうになったり、意味が分からずポカンとしている者もいる。

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