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第5章03 [宇宙人になっちまった]

 敬一は裏口ドアノブを慎重に引き、中に足を踏み入れた。床のきしむ音がする。入ってすぐ左に上り階段が有り踊り場が見える。まっすぐな廊下の向こう側には正面入口が見える。廊下には数枚のドアが有り、そのドアから誰か出てきたら隠れる余地はどこにもない。一階の入り口の部屋には池田綾音たちがいる。二階の様子を探ることにした。階段を一段上がるたびに木造作りの建物はギシギシ音を出す。踊り場で動きを止めて聞き耳を立てたがやはり物音一つしない。罠なら階段の上と下で挟み撃ちにすることができるが、なんの動きもない。
慎重に足を動かし二階に着いた。一階と同じ位置に長い廊下があり、階段はここだけのようだ。ドアの数は少なく、大きな部屋が一つと階段のそばの小さな部屋だけだ。
 敬一は物音のしないことを確かめると、二階の部屋の中に何があるのか確かめたいと小声で言った。二人は黙って頷き敬一の後に続いた。
 ドアを少し開け、隙間から中を覗き込んだが人のいる様子はない。半分ほどドアを開け、中腰で上半身を中に入れると何かに弾かれたようにのけぞり倒れた。すぐ後ろにいた夢実も倒れ、陽介は階段から落ちそうになった。様子を窺ったが気づかれてはいないようだ。敬一は陽介に室内を見るように促し、驚くなよ、と小さく言った。陽介は体勢を整え慎重に身体を室内に入れた。ゆっくり顔を動かすと部屋の正面が見え、陽介はビクンと身体を動かすと固まったように動かない。敬一は心配になり陽介の肩を引いて廊下に身体を引き出した。
「なんだあれは?」
 陽介は放心したように言った。
「吐き気がする」
 敬一は吐き捨てるように言った。
「撮ったか?」
 敬一が訊くと、陽介は首を横に振って撮るのを嫌がった。夢実は二人の様子を見ていたが、陽介を押しのけると、自分の身体を室内に半分ほど入れた。携帯を取り出すと、そのまま頭は出さずにカメラを正面に向け撮影した。すぐに再生すると夢実は声を出しそうになり自分の口を押さえた。
 部屋の正面には祭壇があり、その中央に動物の首が並べられ血が滴っている。猪や鹿、熊の首もある。その頭部に立てられたろうそくが顔に垂れている。

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