SSブログ

第5章08 [宇宙人になっちまった]

 夢実はスーツの力で男をはねのけようとしたのだ。二人も同じように腕をねじ上げられたが我慢して部屋へ連れて行かれた。
「どうする気よ、誘拐の罪は重いわよ」
 夢実が腕を掴んでいる男を睨みながら言った。
「姉ちゃん元気がいいねぇ、今のうちだけだ」
 男は半笑いで言うと、更に腕をねじ上げ、三人を壁際に立たせた。その間に男二人で床板を持ち上げると地下室に降りる階段が現れた。三人は背中を押されながら地下へ下りて行くと、地上の古びた建物からは想像できない景色が目に入ってきた。
「え、ここは何? どういうこと?」
 夢実が思わず言った。かび臭くて陰気な地下と思ったら、かび臭いこともなく、隅々まで明るい照明で照らされている。
「驚いたか、俺たちの研究所だ。ここで日本を操ることができる。もうすぐだ。お前たちにも協力して貰う」
 男がニヤニヤしながら言った。
「嫌よ、早くここから出して!」
 夢実が威勢よく言った。
「自分の立場がわかってないねぇ。家出高校生が行方不明ってことでおしまい。誰もこんなところに探しに来ない。諦めて協力した方が身のためだ」
 男はそう言うと、三人を小さな部屋に入れた。
「お利口さんにしてろよ」
 男はそう言い残すと地上へ行った。
「どうして逃げないの?」
 夢実が不満そうに言った。
「池田綾音の顔見たら気が変わったんだ。あいつの正体を知りたいんだ。キルケ様が何者か正体を暴いてやる。スーツがあればいつでも逃げられるさ」
 敬一が辺りを見廻しながら言った。
「ここはどうなってんだよ、古くさい建物かと思ったらさ、二階は怪しげな教会みたいだし、地下室は研究所だって言うし。ここで日本操るってできるわけないだろう。あいつら何者だよ」
 陽介が苛立ちながら言った。
「サードブレインの奴らはここじゃ子ども扱いで優秀なペットだって言うし、どうなってんだ。俺にもわからないよ」
 敬一は窓のない部屋を見廻しながら言った。
「エフと連絡できるかな」
 夢実はそう言いながら目を閉じた。しばらくして目を開けると、
「話はできたわ、でも私たちのいる場所はわからないらしい。この場所はウェーブも電磁力線も通らなくてブロックされているんだって。エフの言う謎の場所ってここらしいよ」
 夢実はそう言って天井を見上げた。見たところでは普通の天井に照明器具が付いているだけだ。普通のコンクリートならなんの問題もないらしい。だけどここは何かを隠す目的があって、最初から円盤から見られることを想定していたんだろうって。速く逃げた方がいいよ。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ: