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第6章03 [宇宙人になっちまった]

 病院の研修室に全員が集まっている。和歌山のことに天文部の話など、話す内容が多すぎるし、信じられないようなことばかりだ。ドクターとエフは話を整理し、わかりやすく皆に伝えてくれたが、キルケという悪魔についてはまだわからないことが多い。綾音は普通の高校生で操られていると思っていたが、キルケという悪魔が綾音として生まれてきたのだ。綾音は生まれながらにして悪魔だ。普通の家庭で育った悪魔なんて考えられないが事実のようだ。キルケはそうやって時の来るのを虎視眈々と待っていたのだ。信じられないほどの忍耐力を発揮して準備してきたのだろう。まさにジグソーパズルのピースを一つ一つ合わせるようなものだ。
 ドクターが一番心配しているのは綾音が敬一と陽介に言った、日本が滅びる何かが始まるということだ。和歌山では有力な政治家が下僕にされるのを目撃したのだ。下僕は政治家一人とは思えない。どれほどの有力者を悪魔の身内に取り込んでいるのか未知数なのだ。今、具体的に動けることは何もない。しかし、何かが水面下で動き始めているのだろう。誰にも気づかれず準備が整えられている。
 我々にできることは、監視を怠らないこと。少しでも異変を見つけたらすぐに連絡を取ること。悪魔を見つけても不用意に関わらないことを確認した。サードブレインが緊張し始めているのがわかる。何かを察知しているのだろう。
 ドクターは、推測だがと前置きしてキルケについて話した。
「エフによれば悪魔は量子ネットワークを利用した生命体で、肉体を持たない。だから、離合集散を自由に行うことができる。ところがキルケは肉体を持つ悪魔で、輪廻転生を何度も繰り返している。電磁波やネックレスは効果がないようだ。キルケは量子ネットワークの悪魔を生み出し意のままに操ることができる。おそらくこれが最大の武器なんだろう。ただ、敬一君たちの話を聞くと、どうも悪魔は昼間の光には弱い傾向があるように思う。ドラキュラみたいに太陽光に晒されて消えてなくなるなんてことはないだろう。光の性質として光子は粒子の性格を持っているからその影響かもしれない。だから、念の為に夜は強力なライトを持っていた方がいいと思う。まだまだ未知数で油断できないから注意が必要だ。キルケの動向はエフが監視してくれる。何を始めようとしているのかまだわからないが、俺たちがキルケの動きを止めないと日本が危ないことになるだろう。普通の女子高生の正体が悪魔で日本を滅ぼすなんて誰も信じないだろう。そんなこと言ったら俺たちが逮捕されてしまう。注意深く行動しよう。それから、敬一君が持ち帰ってくれた錠剤は同僚の専門家に分析してもらう予定だ。わかったらすぐ皆に知らせよう」

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