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第7章02 [宇宙人になっちまった]

 キルケもこの放送は目にするし、手の内を明かしているからリスクは高くなる。集合場所まで明かしてしまったのだ。キルケはもう動き始めているかもしれない。下手をすればまんまとキルケの罠にかかってしまうことも考えられる。
 屋上カメラで放送センター周辺をモニターすると、やはり人の列がこちらに向かっている。しかしその動きは緩慢で昨夜のような勢いはない。出入り口には照明装置をセットしてあるので、仮に暗くなってもここに入ることはできないだろう。
 放送センターには少数のスタッフを残し、ユニコ会は各グループに別れて行動することになった。敬一たち四人と職員数人はエフの円盤で官邸の屋上ヘリポートに向かい、他のグループは中継用照明車に分譲して官邸を目指す。
 円盤から官邸周辺を見ると、迷彩服を着た隊員と警察官が目立つ。人数は多いが動きがバラバラでまとまりがない。目的もなく徘徊しているようにしか見えない。直射日光を浴びているせいもあるのだろう。ビルの谷間や木陰にいる悪魔は油断なく周囲を警戒しているように見える。注意が必要だ。
 幹線道路には車が目立ち始めた。オフロード車や、投光器を積んだ車、クレーンの先に投光器を取り付けている車もいる。様々な種類の車が四方から官邸を目指しているが、道路上にフラフラと歩く人影も増えてきた。おそらく車の動きを阻止しようとしているのだろう。悪魔と言っても、乗っ取られているだけなのだ。車で轢き殺しながら進むことはできない。このまま路上に人が増えると車は官邸には進めなくなる。それどころかこのまま動きを封じられたまま日が暮れれば、凶暴な殺人鬼になって襲いかかってくるのだ。照明装置が有効でも限界がある。このままだと最悪の事態になりかねない。中継用の無線で連絡を取り合っているが、どのグループも先へ進めず立ち往生している。このままでは自分たちはおろか、協力してくれた人も巻き込んで犠牲にしてしまうかもしれない。円盤から見ると、どの車も遅かれ早かれ立ち往生することになる。キルケの思う壺にはまったのだろうか。
「みんな、ライトを点けて!」
 エフが立ち往生する車を見ながら言った。サードブレインのいる車には情報が伝わり、ライトを点けるのが見える。しかし、そのほかの車は立ち往生したままだ。職員が放送センターに連絡し、テレビを通じてライトの点灯を指示してもらうと、あちらこちらで照明を点灯する車が増えてきた。
 直射日光と強力ライトの光線を浴びた悪魔の様子が変わってきた。特に正面から直接光線を浴びた悪魔は動きが止まり、そのまま動くのを忘れたように呆然と立っている。円盤が高度を下げて様子を見ると、車から仲間が出て慎重に近づき、背中を押すと促されるままに路肩に移動して座らされている。
「あ、悪魔がいない!」
 夢実が驚いたように言った。敬一は目を凝らして座らされた悪魔を見たが、他の悪魔と大した違いはない。
「よく見て! ライトが触接目に入った時を見るのよ」
 夢実はそう言いながら、ライトに向かって歩いてくる悪魔を指さした。敬一がその悪魔に目を向けた瞬間、悪魔の顔がライトに向いた。
「え! あれは?」

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